第11話 : ストレス解消

 お開きになったあと、間地代理と駅で別れたら、水琴が2次会に行こうと俺の腕を組んで誘ってくる。


 智鶴に目をやれば、ビックリした顔をしながら、小さく頷いている。

 行ってこい、という合図だ。

 本音として酒の出るところには絶対に行きたくない。

 水琴が荒れるのが確定しているみたいなものだから、喫茶店くらいしか行きたくない。


「明日も会社だからそんなに飲まないわよ」

「そうしてくれ・・・・」


 その言葉が信用できないことはこれまでの経験で証明済みだ。

 ま、腐れ縁だ。我慢するよ・・・・というレベルじゃなかった。



「あのエロ代理、ああやって男を自由に操ってるのよ。だってしてるんだから」

「え、俺、知らないんだけど」

「女性の間じゃ有名な話よ。アンタも注意しなさいよ」


 主な内容を文字にすればこれだけだけど、一杯めのレモンサワー半分でコイツの目は完全に据わっている。座布団に胡座で座り、上体を右手の方へ傾けながら間地代理への愚痴をこれでもかと俺にぶつけ、なんだかんだで2時間近く独演会をしていた。

 いつもよりもかなり荒れている感じがしたのは、さっきまで愚痴の素が一緒にいたからなのか。

 それを知ってて彼女は俺にウインクをしたのだろう。

 という言葉の意味を教えながらこの後のは任せた、と。


 それにしてもとはどんなことなんだろう。


 水琴を見れば最後は声が枯れたあと、瞼が半分閉じていて、ほどなくそのまま寝落ちしてしまった。

 白目を見せながら股を広げてイビキをかくかぁ──これじゃ、どれほどの美女でも彼氏ができないわ。


 仕方がないので、飲み代を払ってタクシーに乗せる。

 話し疲れたのか、全然起きる気配がない。



「ただいま」

「お帰りなさい」


 水琴を部屋に放り込んで寝かせ、自分の部屋に入ると智鶴がいた。


「水琴さん、部屋まで送ったの?」

「まあな、もう大変だよ。あそこまでひどいとは思わなかったからな」

「どんなふうに?」

「独演会を聞かされた。水琴もキツいんだろうけど、聞かされる相手のことを考えなきゃ」

「じゃ、ストレス解消しよっか」


 そう言って、抱きついてきた。


「カラダが気持ち良くなれば心も癒やされるよ」

「待てよ、シャワー浴びるから」

「うん」


 この前はそのままだったが・・・・ああ、酒臭いのを抜きたいのか。

 それからが大変だった。

 回数はともかく、甘え方が半端じゃない。会社では絶対に見せない姿をずっと見せてくる。

 水琴のことをそこまでライバルだと思ってるのか・・・・


 この先、会社で大丈夫だろうか。

 腰を振りながら、そんなことを考えていた。

 カラダはキチンとしていたと思っていたら、最後に智鶴から言われた。


「女性を抱きながら他のことを考えるのはあまり良いことじゃないわよ」


 全てがお見通しか。

 智鶴の気配りがこんな所で出るとは・・・・

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