あなたが手にした 一冊の本は

群れからはぐれた 孤独な鳥が

かぼそい言葉を せっせとくわえ

あれこれつくろい 並べたものです


すこし不器用な 恥ずかしがり屋

本当はとても かわいいやつです

ですからどうか あなたの指で

片意地な紐を 解いてください


そして読み終わり 満足したら

遠慮しないで 燃やしてください

寂しい夜でも ちいさな炎が

あなたの胸に 寄り添えるように


耳を澄ませば 炎の中から

ぱちぱちと音が 聞こえてきます

それは久しく 眠れる雛が

卵の殻を 破る音です


あなたのやさしい 手のぬくもりが

内気な命を かえしたのです

灰はふたたび ひとつに集まり

不死鳥となって 舞い上がります


そして不死鳥は 夜空を覆う

きらめく大樹の 枝に留まります

かつてあなたが 目にした文字は

見事な星座を 形作ります


自分の胸から 昇る星座は

最も明るい 北極星です

それは真昼でも 嵐の夜でも

あなたの心に 輝くでしょう


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