第293話

 まずはローラ嬢と教皇個人の事を調べてみたが、何かしら封印を解除する為の要素が見つかる事はなかった。なので、ここからの方針をどうするのか皆とも相談した結果、方向性を変えて調査する事にした。ローラ嬢の生家であるベルナール公爵家や、教皇の家族や家系などといった部分、血筋に関するものに焦点を当てて調査する事にした。

 しかし、ローラ嬢や教皇といった個人の事を調べる事は比較的容易であっても、長い歴史を持つベルナール公爵家や、貴族ではないもの代々の教皇を輩出してきた家系を調べるのは、もの凄く骨が折れる事となった。

 ベルナール公爵家の方は、言わずもがな敵対している貴族家であるという事と、カノッサ公爵家と同列の公爵家であるという事が調査を難しくさせた。しかしそこは、超一流の影の者たちの力と、アンナ公爵夫人の力のお蔭で解決する事が出来た。

 そしてこれは、代々の教皇を輩出してきた家系についても同様であった。教皇の家系も古くから続いてきた血筋であり、アモル教の教皇という地位の高さから、生家には常に腕利きの警護・護衛の人間がいる。それらを潜り抜けて情報を得るのは、影の者たちでも簡単ではなかった。だがここでも、アンナ公爵夫人の力のお蔭で怪しまれる事なく、教皇の家系について情報を収集する事が出来た。


「情報は敵を倒す事が出来る武力と同等か、それ以上にもなる強大な力よ。情報を正確に、より詳細に得ることが出来れば、戦局を自分たちで左右する事も可能になる。そして情報を得る為には、常日頃から目を光らせ耳を澄ませておかないといけないわ」


 今回の調査において大いに力となってくれたのは、アンナ公爵夫人がトップで指揮を取っている諜報ちょうほう部隊の者たちだ。この諜報部隊とは、カノッサ公爵家の一部隊ではなく、アンナ公爵夫人個人が有している秘匿されている私設部隊だ。

 この秘匿されている諜報部隊は、情報は力だと若い頃から感じていたアンナ公爵夫人が、コツコツと時間とお金をかけて作り上げた部隊。この部隊には、アンナ公爵夫人自らが集めた身分も性別も問わない精鋭揃いの猛者たちが所属しており、日々何かしらの情報をアンナ公爵夫人のもとへと集めている。

 諜報部隊に所属している者たちは、この国の様々な所に潜んで情報を収集している。今回の調査対象であったベルナール公爵家や教皇の家にも、アンナ公爵夫人の諜報部隊の者たちが幾人も潜入しており、内側から様々な情報を詳細に手に入れてくれた。さらには、出入りの業者や商人として付き合いを持ち、その方面からの情報も収集する徹底ぶりだ。

 そして諜報部隊から集まった情報を精査し、色々な角度から推察してみた事で、幾つかの予測を立てる事が出来た。後はこれらの予測を、アモル神たち神々や、アセナ様やケルノス様たち聖獣様たちと共有して、神官が封印に付けた条件がどの予測に近いのかを確認しよう。


(それにしても、情報は強大な力って考えているのが、母さん以外にもこの世界にいたんだな。まあ二人とも親友だったという事もあって、そういった部分の話もしていたんだろう)


 俺の故郷であるベイルトン辺境伯領にも、母さんが指揮を取っている諜報部隊が存在する。小さい頃にその事を教えられた時、この剣と魔法の世界にスパイの様な組織がある事に、もの凄く驚いたのをよく覚えている。母さんがベイルトン辺境伯家に諜報部隊を設立させたのは、親友であるアンナ公爵夫人の影響が大きかったんだろうな。

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