第294話

『封印の解除に条件を付けるか。あの神官ならばやりかねんな』

『しかし、結果的にとはいえそれは正しかった。綻びによって一部が封印から抜け出したとはいえ、長き時が過ぎても完全に暗き闇が復活する事はなかった』

『確かにな。暗き闇の封印に関しては、あの神官の徹底ぶりがこうそうしたな』


 アセナ様にアポを取り、古き森へと訪れた俺たち。得られた情報や、幾つか立てられた予測など、色々な情報をアセナ様とケルノス様と共有する。アセナ様もケルノス様も、暗き闇を封印した神官の事を思い出しつつ、封印に条件を付けた徹底ぶりをめる。

 そして俺たちの立てた予測についてだが、アセナ様もケルノス様も神官がどういう人間であったのかを考慮こうりょした上で、幾つかある予測の中で最も可能性が高いものを二つ選んだ。それが、勇者・神官・聖女の末裔の血を浴びる、もしくは勇者・神官・聖女の末裔による封印解除の承認というものだ。

 勇者・神官・聖女の末裔の血を浴びるというのは、文字通り暗き闇が封印されている杖に、色濃く血を継いでいる者の血液を浴びせるという事。こちらの解除方法に関しては、末裔の血の一滴だけ封印が解除されるのか、それとも致死量の血を浴びなければ解除出来ないのかという疑問が残る。

 もう一つの、勇者・神官・聖女の末裔による封印解除の承認についてだが、こちらは血を流す事がない方法だと思われる。それぞれの血を色濃く継いでいる末裔が揃い、暗き闇が封印されている杖に対して、その封印を解除すると宣言するというものだ。


『現状を考えるに、封印解除の承認という方向で奴らは動いていそうだな』

『だが、最初は勇者の末裔の血を求めて襲撃してきた。並行して進めている可能性も捨てきれん。ウォルターたちもそう考えているのだろう?』

「はい。最初に襲撃してきた時の様子からも、確実に二人の王子を狙って行動し、血による封印の解除を目指しているのが分かります。もし承認による封印解除を行ったとして、無血で済ませるとは考えづらいです」


 暗き闇側の最優先目標は、暗き闇を封印から解き放つ事。それを成し遂げる為に、ローラ嬢や教皇という権威のある者たちを手駒として使い、気付かれる事なく封印を解除する方向で動いているに過ぎないと思っている。もし承認による封印解除が出来ないと判断すれば、直ぐさま血を浴びせる事による封印解除に切り替えて、用済みとばかりに切り捨てるだろう。

 幸いにも、聖女ジャンヌの末裔であるクララは俺たちと共にいる。クララのお母さんであるセラス男爵夫人も、アモル神に力を与えられている事から、早々簡単に捕らえられる事はないだろう。そうなると、承認による封印解除の方法は最終的に不可能だと、暗き闇側も直ぐに理解するだろう。

 その後もアセナ様やケルノス様と話し合い、起こり得る最悪の想定を考え、その時にどういう行動を取るのかを確認した。ローラ嬢や教皇、それからベルナール公爵家の監視を強化して、暗き闇側の方針転換がいつ起きてもいい様に、俺たちも常に常在戦場じょうざいせんじょうの心構えでいよう。

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