第287話
ケルノス様との再会、ガリル様たち古き聖獣様たちとの新たな出会いなど、濃密な一日を過ごした俺たちは、再び日常へと戻ってきていた。
そんな日常を過ごしている王都は今現在、ローラ嬢とアルベルト殿下の婚約式が近づいていた時と同じ様に、熱気とやる気に満ち
「そういえば、もう直ぐ建国祭の時期か」
「色々とあり過ぎて、建国祭の事を忘れていましたね」
アイオリス王国建国祭。文字通り、この国が建国された事を祝う年に一回のお祭り。王都のみならず、副都や他の都市などでも同じ日に行われる、国を
そして、アイオリス王国の国教であるアモル教でも、建国祭において催し物を行う。教会で無料の回復魔法による治療や、何時よりも倍以上の大規模な炊き出しをしたりと、様々な
この慈善事業の中で特に王都の人々に喜ばれているのが、無料の回復魔法による治療が受けられるというものだ。魔法が発達しているこの国においても、回復魔法が使える者はそこまで多くはない。さらに言うと、回復魔法にも色々と種類や効果に違いがあり、効果の高い回復魔法を使える者は限られてしまう。なので、効果が高く色々な種類の回復魔法が使える者は、アモル教のみならず様々な者たちが手元に置こうとする。
アモル教にも効果の高い回復魔法が使える者が多く所属しており、普段貴族や王族たちの専属に近い立場になっている者たちが、建国祭においては王都の各教会に常駐する。そして、症状が重かったり大きな怪我をしている者に、効果の高い回復魔法を無料でかけていく。そうする事で、市井の人々からの信仰や信頼を集めているのだ。
「王族たちもアモル教も、総力を挙げて動く建国祭。王都にいる人々が思い思いに動き、普段とは全く異なる雰囲気となる日」
「それだけ普段と全く違うとなれば、何時もと違う事が起こっても祭りだからで片付けられてしまうし、誰かが変な事をしていても気付かないわね」
「暗き闇や付き従う者たち、そしてローラ・ベルナールとアモル教教皇にとって、人目を気にする事なく動く事が出来る日ね」
イザベラやクララの言う通り、この国の建国を祝う祭りの日こそが、皮肉にもこの国を脅かそうとする者たちが動きやすくなる日となる。まさか王都の人々も、この国の貴族のトップである公爵家の者たちと、国教であるアモル教のトップである教皇が、この国を脅かそうとするなんて考えもしていないだろう。
「警戒網を広げるにしても、王都は広大過ぎるから全ては無理ね」
「我が家の総力をもってしても、王都全域を監視し続ける事は不可能よ。それこそ、王都にいる我が家の協力者を全員動員したとしてもね」
「ですが、その協力者たちの目を教皇や大きな教会に集中させれば……」
「そうですね。逆に範囲を絞り込む事で、質が高い詳細な情報を手に入れる事が出来ます。その中には、暗き闇に繋がる情報もあるかもしれません」
「マルグリットとナタリーの言う通りね。他の所への目を向けるのを諦める事になるけど、その分私たちが得られるものもまた大きいわ。建国際では、ローラや教皇たちの動向に私たちも目を光らせましょう」
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