第260話

 クララとの楽しいダンスを踊り終わった後、続けてナタリー・マルグリットとのダンスを楽しんだ。ナタリーが身に纏っているのは、彼女の物静かで穏やかな性格や、全てを包み込むような優しさが表されている、グラデーションが綺麗なグリーン色のドレス。そしてマルグリットが身に纏っているのは、彼女の高潔な精神や落ち着きのある性格、自然と滲み出ている気品が表されている、グラデーションが綺麗なパープル色のドレス。どちらのドレスも、二人の魅力が十二分に引き出されていた。

 四人とのダンスを終えた俺は、最後のダンスの相手であったマルグリットと共に、ダンスホールを静かにあとにした。その際にも、ローラ嬢やアルベルト殿下たち、女豹たちの視線が集まっていたが、気にする事なくイザベラや友人たちのいる場所まで戻った。


「ウォルター、お疲れ様」

「いやいや、このくらいなら特に問題はないよ」


 四人連続でダンスを踊るのは、魔物と長時間戦う事よりも、正直に言って楽ではある。まあ、こんな失礼な事を面と向かって言うなんて、絶対にしないし出来ないがな。


「それにしても、ローラたちもあの娘たちも、ずっと私たちの事や皆の事を見てたわね」

「そうね。より正確に言うなら、私たちが着ているドレスやスーツにだけどね」

「どのドレスやスーツも、とても素晴らしいものばかりですから」

「互いに激しく争い合っている最中であっても、女性として見逃す事が出来ないんでしょうね」


 流行に敏感であるというのは、前世であろうと今世であろうと変わらない。俺やイザベラたち、イザベラの派閥に属している友人たちがダンスホールに姿を見せてから、ローラ嬢や女豹たちは興味津々でドレスを見ていた。

 そして、それはローラ嬢や女豹たちだけではない。今現在俺たちの場所にいる、中立を保っている女子生徒や男子生徒、それから先生たちも同じ様に興味を持っている。現に談笑している生徒たちも先生たちも、イザベラたちや友人たちに、ドレスやスーツについて積極的に質問を投げかけている。

 今回お披露目と宣伝を兼ねているので、カノッサ公爵領で作っているという情報は、友人たちに秘匿してほしいとお願いはしていない。なので、友人たちは質問を投げかけてくる生徒たちや先生たちに、隠すことなく素直に質問に答えていった。その結果、情報は生徒たちや先生たちに一気に広まっていき、情報収集に集中していたローラ嬢と女豹たちにも、同じくこれらの情報が広まっていった。

 どちらの派閥も詳しい話を聞きたそうにしているが、お互いの陣営への視線を外せないので、歯がゆそうにしながらその場から動かない。というより、動く事が出来ないというのが正しいか。そして、互いに動きを監視し続けてきた事や、こちらに情報を集めにいけない事によるフラストレーションもあいまって、ついに女と女の戦争への火蓋が切られた。

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