第261話

 ついに火蓋を切った戦争において先手を取ったのは、女豹たち貴族令嬢の連合側だ。女豹たち貴族令嬢連合を代表した三人の貴族令嬢が、ローラ嬢たちのいる場所に向かって歩き出す。

 一人は勝気でカッコいい女性、一人は守りたくなる様な可愛らしい女性、一人はクールで凛としている女性。三人とも外見的に異なる顔立ちをしているが、どの令嬢も美人である事は間違いない。

 様々な爵位の貴族家が集まっている連合、その中の代表として一番最初に動くという事は、彼女たち三人は高位貴族のご令嬢という事なのだろう。恐らく、三人とも公爵家の一つ下の侯爵家、それも古い血筋がその身に流れている生まれだと予想する。


(確かに、爵位という点で考えるのなら、侯爵家の令嬢であるのなら失礼にはあたらないだろう)


 それに加えて、このアイオリス王国に古くから存在する、長い歴史を有する貴族家の令嬢であるのなら、側近たちも無下に扱う事は出来ない。この魔法国家に、男尊女卑だんそんじょひ慣習かんしゅうが未だに強く残っているとしてもだ。


「やっぱり、彼女たち三人が貴族令嬢連合のトップみたいね」

「生家の格を考えても、あの三人が妥当ではあるわね」

「彼女たちが、魔法学院内の成績上位者である事も関係しているのでしょう」

「座学のみならず、魔法実習においても優秀であると、先生たちからの評価も高いですから」


 ローラ嬢たちに向かって近づいていく貴族令嬢三人を見て、イザベラたちは予想通りであったという風に言う。どうやらイザベラたちは、代表者となった貴族令嬢三人の事を前々から知っている様だ。


「皆、あの三人の事をよく知ってるんだね」

「生家の家柄が良く、文武両道の成績上位者だったから」

「その事もあって、元々魔法学院では知られている子たちなのよ」

「なる程。知られるべくして、知られている有名な令嬢たちだったのか」

「ただ、あれ程までに野心家であったのは知らなかったわ」

「アルベルト殿下の婚約者であった私に、何かしてくる事もありませんでした」

「私にもです。野心的かどうかは別として、その点においてはローラさんよりはましです」


 アルベルト殿下の婚約者であったマルグリットと、そのアルベルト殿下に思慕しぼの念を抱かれてたナタリー。その二人からの言葉に、胸を張って堂々としながら歩く貴族令嬢三人の人間的な評価を、ほんの少しだけ上方修正しておく。だが元々の評価がそもそも低いので、ほんの少し上方修正したとして、評価が低いままな事に変わりはないがな。

 そしてついに、貴族令嬢三人は足を止める。貴族令嬢三人が足を止めた位置は、それぞれ異なる位置であり、一人一人の前には違う人物が立っている。

 勝気でカッコいい令嬢の前には、アイオリス王国魔法師団長の息子であるセドリック・ピエールが。守りたくなる様な可愛らしい女性の前には、アイオリス王国カルフォン公爵家の長男であるマルク・カルフォンが。そしてクールで凛としている女性の前には、アイオリス王国宰相の息子であるフレデリック・ランドンが立っている。貴族令嬢三人は、三人同時にカーテシーしながら頭を下げ、ローラ嬢に向けた最初の矢を放つ。


「「「私と、一曲お相手願えませんか?」」」

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