　肉体・精神共に深く交わり合い満たされる男女の愛。つまりそれは、男女が恋人同士や夫婦の関係であるという事だ。親愛の感情による力でも、暗き闇と真っ向から対等に戦う事が出来る程に強力であるのに、それよりも遥かに強いとされる男女の愛となると、一体どこまでの力になるのか想像がつかない。それに、そこまで強大な力による強化を受けたとして、俺やイザベラたちの心身に何の影響もないのだろうか？

「アモル様、質問しても宜しいでしょうか？」

「はい、構いませんよ。ウォルターさんは、一体何について聞きたいんでしょうか？」

「アモル様の授けた力による強化によって、何か心身への悪影響などはあるんでしょうか？また、最大限まで発揮される男女の愛によって強化された場合、その強大な力に心身が耐えきれるんでしょうか？」

「まず最初の質問についてですが、私の授けた力による心身への悪影響は、クララにもウォルターさんたちにも全くありません。次に、強大な力に心身が耐えきれるかという質問ですが、こちらについても問題はありません。愛の力による強化は特殊で、強化中は心身が愛の力に耐えれる様に保護されます。なので、心身が耐え切れずに倒れたり、意識を失ったりする事はありません」

「なる程。色々と教えてくださりありがとうござました」

「いえ、大丈夫ですよ。皆さんも、何か疑問があれば質問してくださいね」

　アモル神がそう言ってくれたので、愛の力による心身の強化について色々と聞いてみた。色々な質問で分かった事は、まずは親愛の感情による心身の強化は、魔法による身体強化の二倍程の強化率である事。そして男女の深く大きな愛の力になると、三倍から四倍程の強化率になり、魔法に対する抵抗力などが親愛の感情よりも大きく上昇する。さらに魔力の自然回復量や速度の上昇に、術式の展開速度や魔法の威力の上昇など、親愛の感情に比べて愛の力による恩恵が多い事が分かった。

　その中でも特に興味深いと思った恩恵は、臓器や骨格、それから細胞に至るまでの人体の全てを強化する事だ。魔法による身体強化は、どこまで魔力を込めて強化したとしても、細胞レベルまで人体を強化する事は出来ない。それだけも凄いのに、身体に出来た傷を高速で癒して体力を回復させ、集中力を維持する事で長時間の戦闘が可能となる。属性魔法の使える魔法使いだけでなく、属性魔法の使えない剣士である俺にも非常に有用な恩恵だ。

（俺が最前線で戦う時間が長ければ長い程、イザベラたちの安全が確実に確保される。その為にも、アモル神の愛の力による心身の変化に、一日でも早く慣れる必要があるな）