第224話
「クララ、準備はいい?」
「ふぅ~……よし。大丈夫よ、お母さん」
「皆さんも、準備はいいですか?」
セラス男爵夫人の問いかけに、クララ以外の俺たち全員は頷いて返す。俺たちの頷きを確認したセラス男爵夫人は、日記の錠を開ける為の鍵を作った時の様に、神々しさのある魔力を全身から発する。その瞬間、女神像からも同じく神々しい魔力が発せられ、全身から
「ここは一体…………」
『ここは、愛の神たる私が作り出した、神と人間が直接話し触れる事が出来る場よ』
突然場所が変わった事に驚く俺たちに向かって、静かでいながら
「あら、久々に人と会うから忘れてたわ。直ぐに抑えるわ」
現れた女性がそう言うと、その身から溢れ出る圧倒的で神々しい魔力が、一瞬にして幻であったかの様に消え去る。魔力による圧が消え去ってくれたので、俺たちはゆっくりと一度深呼吸をして、自然と入っていた力を抜いて身体を休める。前方に立っている女性は、そんな俺たちの様子に安堵しつつ、良かった良かったと頷いている。
改めて周囲を見渡して見ると、先程までいたアモル教の教会の中ではなく、シンプルでいて荘厳な神殿の中に移動している事が分かった。しかも、周囲には神殿以外の森や湖などの自然や、幾つかの塔らしき建物も見える。これは最早、場所が違う所の話ではない。俺たちの前方に現れた女性、アイオリス王国全土で信仰している愛の神であるアモル神が作り上げた、神が人と話し触れる為に用意された一つの世界だ。
「アモル様、お久しぶりでございます」
「お久しぶりでございます」
「イーサン、セラス、久しぶりね。二人とも元気だった?」
「はい。怪我や病気に苦しむ事なく、毎日
「領民たちも皆元気で、先日も元気な赤ん坊が四人生まれました」
「それは良かったわ。人の子らが毎日健やかに過ごし、新たな命がこの世界に生れ落ちた事は、私たち神にとっても喜ばしい事なのだから」
アモル神は
「初めまして、若き人の子ら。私の名はアモル。この国を古くから見守り続けてきた、神々の一柱にして愛を司る女神よ」
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