第218話

 アルベルト殿下がマルグリットと正式に婚約破棄し、側近たちも彼女たちと正式に婚約破棄してから暫く経った今、魔法学院では欲深い女子生徒たち同士の激しい争いが日々行われている。王族の仲間入りをし、継承権第一位で次期国王の正妻となる姿を夢見たり、権力や富による好き勝手する生活を手に入れようとしている。側近たちの家も王族と比べると一段格は落ちるが、代々受け継いできた国にとって重要な役職と、それに付随する大きな権力がある事から、欲深い女子生徒たちが正妻の座を狙って動いている。

 特に激しく女の争いをしているのが、今の所次期国王となる予定である、アルベルト殿下の正妻の座だ。欲深い女性たちの中では、公爵令嬢であったマルグリットではなく、裕福ではあるが爵位が低い男爵令嬢であるナタリーを正妻にしようとした事から、次期国王の正妻の座に爵位の高さは必要ないとなっている様だ。そして、欲深い女子生徒たちがそう考える様になった出来事が、俺とアルベルト殿下たちの決闘だ。

 あの決闘を陛下や王妃が止める事をせず、尚且なおかつ男爵令嬢のナタリーと婚約・結婚する事を認めたという事が、欲深い女子生徒たちの常に溢れ出る欲を縛っていたかせを外した。男爵令嬢であるナタリーと婚約・結婚が認められるという事は、貴族としての爵位の高さなどが一切必要なく、アルベルト殿下の気持ち次第で婚約・結婚が認められるという結論に至ったみたいだ。


「ちょっと貴方たち!!殿下がご迷惑に感じていらっしゃるのが分からないの!?」

「ローザ様。それはローザ様が思っている事であって、殿下が思っている事ではありませんよ」

「そうですわ。寧ろ、ローザ様が殿下の気持ちを勝手に代弁する事の方が、殿下にとってはご迷惑になっているのでは?」

「――なんですって!?」


 嫌でも耳に聞こえてくる、激しくも醜い女の戦い。バチバチと所構わず誰彼だれかれ構わずに火花を散らし合い、当事者であるはずのアルベルト殿下を置き去りして、欲望を叶える為のキャットファイトをしている。侯爵令嬢から男爵令嬢まで、アルベルト殿下の正妻の座を射止める為にと、アルベルト殿下に近づきアピールしようとする。それを一歩リードしている状態のローザ嬢が、自らが正妻であるかの様に振舞いながら、獲物に近づく女豹たちに激しく威嚇している。

 この激しくも醜い女豹たちの戦いは、アルベルト殿下の正妻の座を射止めるものだけでなく、側近たちの正妻の座を射止めようとする者たちの間でも頻繁に起こっている。どの戦いにもローザ嬢がその場にいて、連合を組んで戦いを仕掛けている女豹たちと、真正面からぶつかり合って爪や牙で攻撃している。今の所はローザ嬢が優勢ではあるが、このまま連合側の勢力が大きくなっていくと、形勢が逆転する可能性が大いに高い。だが形勢が逆転したとしても、ローザ嬢が素直に引くとは思えない。一番可能性が高い対抗方法としては、マルグリットの時と同じ様に、ありもしない冤罪えんざいで相手を一人一人追い詰めていくというものだな。


(だが今回は、マルグリット一人を相手にしていた時と違って、複数人が手を組んだ連合が相手だ。早々に簡単に冤罪をなすり付ける事は出来ないだろう。それに、連合の女豹たちに反撃に合う可能性もあるが……。ローザ嬢は、……その辺の事は全く考えていないんだろうな~)

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