第217話

「これが攻撃用の魔道具の設計図で、こっちが防御用の魔道具の設計図じゃ。それから、これが戦闘補助用の魔道具の設計図じゃな」

「攻撃用や防御用の魔道具には、それぞれ単体から広範囲といった、様々な攻撃範囲の魔道具を準備しています。そして戦闘補助用の魔道具に関しても、万能型から特化型までの色々な種類のものを準備しています」


 ローザさんとカトリーナが、暗き闇との戦いの為に準備している魔道具の、設計図を見せてくれながら丁寧に説明してくれる。現在ナターシャ魔道具店とアウレリア家の総力で持って、戦闘用の魔道具を作ってもらっており、製作速度も量も今の所順調であると聞いている。


「戦闘補助用の魔道具を使用した場合の強化率は、通常時に比べてどのくらいになるんじゃ?」

「万能型の魔道具ならば、全体的に二割程強化してくれる。そして特化型の魔道具ならば、特化する部分のみ三割程強化してくれるの」

「賢者様もお分かりだと思いますが、強化率をこれ以上上げてしまうと、使用者の身体の方が耐えられません。二割から三割程の強化が限界です」

「まあ、そればかりは仕方のない事じゃの。二割から三割でも強化出来れば十分じゃ。それで、暗き闇との戦いの肝となる防御用の魔道具の方はどうじゃ?」

「ジャックやラインハルトの要望通り、広範囲に強力な守護の結界を展開する魔道具を優先して作っておる。子供でも簡単に、分かりやすく発動する事が出来る様にしておる」

「その代わり、子供にも発動の仕方を分かりやすくした結果、発動させる方法が相手にも簡単に分かってしまう設計になってしまいました」

「そこは敵に狙われやすくなってしまうか。しかし、そこを改善してしまうと、子供たちが容易に発動しずらくなる。ままならぬものじゃな」


 暗き闇との戦いは、どう予想しても王都か副都を巻き込んだ大きな戦いとなる。王都にも副都にも、戦う事の出来ない女性や子供などが多くいる。攻撃は最大の防御だと言うが、それは守るべき者たちが傍にいないからこそ使える戦法だ。守るべき者たちが傍にいれば、敵から集中的に狙われる事は間違いない。そんな守るべき者たちを敵の攻撃から守るために、そして自分たちが全力で戦う事に集中出来る様にする為に、防御用の魔道具の制作に力を入れてもらっている。

 特に力を入れてもらっているのは、ジャック爺たちの会話の中にもあった、強力な守護の結界を広範囲に展開する魔道具だ。この魔道具が使ってもらう事を想定しているのは、主に女性や子供たちなどが避難する先の、教会や冒険者ギルドなどといった大きくて広い建物だ。この魔道具があれば、建物を含めて多くの人を激しい戦闘から守ることが出来る。

 守るべき者たちがしっかりと守られていれば、俺たちも暗き闇との戦いに集中して全力を尽くせる。協力してくれるローザさんや、ナターシャ魔道具店の魔道具師たちには、尊敬の念と共に心からの感謝を送りたい。何もかもが終わったら、魔境産の美味しいものをご馳走しよう。

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