第207話

「は、初めまして。イザベラ・カノッサと申します」

「クララ・ベルトーネです」

「マルグリットです」

「ナタリー・コーベットです」

「……カトリーヌ・マルソーです。お久しぶりです、バルサ姐さん」


 母さんに順番に自己紹介をしているが、カトリーヌはどうやら面識があった様で、母さんの事を姐さん呼びしている。一体どういう関係なのか気になるが、今は静かに見守っておけという直感からのささやきに従い、口を開くことなく様子を見守っている。母さんはイザベラたちを上機嫌で一人一人見ていき、最後に満足そうにウンウンと頷いた。


「皆礼儀正しくて可愛らしい娘ね。こんなにも可愛らしい娘たちが、五人ともウォルターのお嫁さんになってくれるなんて、私としても嬉しい限りだわ」


 上機嫌のまま、ニコニコとしながら母さんがそう言うと、緊張していたイザベラたちがホッと安堵の息を漏らす。どうやら、母さんのイザベラたちに対する第一印象は、非常に良いものとなってくれた様だ。


「改めまして、私はバルサ・ベイルトン。ウォルターの母です。……それで早速だけど、この手紙に書かれた事について、詳しい話を聞かせてくれるかしら?」

「分かりました。それでは私の方から説明させていただきます。まずは…………」


 イザベラがこの中から代表して、コーベット男爵領で俺たちが結ばれた所から、マルグリットがベルナール公爵家を追放され、ナタリーを守るためにアルベルト殿下と側近たちと決闘し、俺がイザベラの騎士となった所までを一通り説明した。母さんは、その話を真剣な雰囲気と表情で、ベイルトン辺境伯夫人として聞いていた。そして一通り話が終わると、母さんは腕を組みながら集中して何か考え込んでいく。そのまま数分間考え込んだ後、組んでいた腕をほどき、軽く息を吐いて俺を見る。


「ウォルター。ベイルトン辺境伯夫人、そしてこの件においてベイルトン辺境伯代理として問う。その行動や意思に後悔はないわね?」

「俺はイザベラたちを心から愛しているし、ナタリーを守るために自分の意思で決闘を受け、王族たちからの干渉を受けない為に騎士になった。自分の行動や意思に、ただの一つも後悔はないよ」

「貴方の言葉と決意、確かに聞かせもらった。……安心しなさい、ただの確認よ。ウォルターの心にほんの僅かにでも迷いがあるのなら、皆が大好きなお話お説教でもしてあげようと思ってね」

「ははは、そうだったのか。(俺たち皆、お話は好きじゃないけどな)」

「ウォルターの言葉と決意を聞いて、心に一切の迷いがない事も、イザベラさんたちの事を心から愛している事は十分に伝わってきたわ。……ベイルトン辺境伯家は、ウォルターとイザベラさんたちの婚約や、騎士となった事について何かを言う事はありません」

「じゃあ……」

「ウォルター。母親として、ただただ貴方が幸せでいてくれる事を願うわ。そして騎士となったのならば、お父さんたちの様に、持てる力の全てで守りたいものを守りなさい」

「はい」

「お父さんたちには、私の方から今回の件について伝えておくわね。……さて、ここからは楽しい話をしていきましょう。イザベラさんたちとは、色々とお話ししたい事が沢山あるのよ」

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