第206話
マルグリットの妹ローラの動きや、ベルナール公爵家の動きが垣間見えたが、俺たちの生活は変わらない。イザベラたちは魔法学院卒業に向けて勉学に励み、俺は皆の騎士として守護に専念していた。そんなある日の休日、カノッサ公爵家に一人の客人が訪れた。
「ようこそいらっしゃいました、バルサ・ベイルトン様。私カノッサ公爵家で執事を務めております、セバスと申します」
「丁寧な挨拶痛み入ります。ご存じだとは思いますが、ウォルター・ベイルトンの母です。ウォルターは現在イザベラさんの騎士になっていると手紙を受け取り、その真偽を確かめる為に、失礼ですがご連絡なしに伺わせていただきました」
「ご事情は理解しております。それに我が主人である公爵も、直ぐにベイルトンから誰かが訪ねてくるだろうと予想しておりました。ですので、何時でもお訪ねになられてもいい様にと準備しておりましたので、迷惑などという事はございません。ご安心ください」
「お気遣い感謝します。それで、ウォルターは今どこに?」
「お連れ致します。皆、バルサ様の荷物を」
『はい』
「ありがとう」
自分の母親が、ベイルトンから遥々カノッサ公爵家を訪ねてきていたその頃、俺はジャック爺やカトリーヌと共に鍛錬するイザベラたちを見守りながら、自身の鍛錬を行って汗を流していた。そこにセバスさんが現れ、その後ろに母さんの姿が見えた時、俺の動きが完全に止まってしまった。
「ウォルター、色々と話を聞きに来たわよ」
「母さん?兄貴たちの誰かが来ると思ったんだけど……」
「そんな訳ないじゃない。息子が婚約、それも五人もの女性と同時によ?あの子たちやお父さんをここに向かわせるより、同じ女性である私が来た方がいいに決まってじゃない」
「母さんがこっちに来て、領地の守りは大丈夫なの?」
「国境線の他国の動きも、魔境の方も落ち着いてるから、私が離れても大丈夫よ。次の世代の子たちも、ウォルター程じゃないけど十分に育ってきてるしね」
「ならいいんだけど……」
ベイルトンに暮らす魔法使いたちを束ねる魔女にして、ベイルトン辺境伯家を裏から支配する女傑。その圧倒的なカリスマ性と覇気によって、家では親父や兄貴たちだけでなく、執事たちやメイドさんたち使用人も母さんの指示には逆らわずに従う。それに領民の皆や冒険者たちからも慕われており、一部の人たちからは姐さんと呼ばれている。その理由を聞くと、何時も遠い目をしながら昔を思い出し、若気の至りだと必ず言うので深くは聞いていない。母さんにもヤンチャだった時期があったんだろう。
「……ウォルター、そちらの方は一体?」
見知らぬ母さんの存在や、俺と母さんの会話が気になった様で、イザベラたちが鍛錬の手を止めてこちらに近づいてきた。イザベラたちに気付いた母さんは、ニコリと笑顔を浮かべて口を開く。
「皆さん、初めまして。私はウォルターの母で、ベイルトン辺境伯の妻、バルサ・ベイルトンです。よろしくお願いしますね」
『!?』
「…………」
イザベラたちは、目の前に立つ女性が俺の母さんだと分かると、もの凄く緊張し始める。それは年上であるカトリーヌも同様だが、その緊張の仕方は、イザベラたちとは少しだけ違う様に見える。そんな緊張するイザベラたちを見て、母さんは
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