第204話

「ローザ、ラインハルト。暗き闇が封印されている場所について、何か情報を知っておるかの」

「ジャックが何も知らないのに、私が知っている訳ないだろう」

「私も副都の城にある色々な書物を読み漁ってはいますが、暗き闇について詳細に書き記された本は、記憶にある限り見た事はありません」

「ふむ。封印の事も関係しておるから、限られた者に限られた方法でしか、それらの情報を伝えておらぬのじゃな。まあ、それも当然と言えば当然か」

「恐らく知っておるのは、当時封印した神官の一族、もしくは神官が所属していた教会上層部の一握りといった所かの」

「さらに考えられるのは、神官と行動を共にしていた勇者たちの一族、中でも直系のみに伝えられている可能性が高いですな」


 ローザやラインハルトの言う様に、暗き闇を封印した神官の直系の末裔や教会上層部、そして神官と共に行動していた勇者たちの直系の末裔などが、暗き闇が封印されている杖がある場所を知っておるという事じゃの。


「封印場所として可能性が高いのは、王都もしくは副都にある大きな教会だろうね」

「別の可能性としては、王城か副都の城の地下深くでしょうな」

「そうじゃの。可能性が高い場所と考えられるのは、恐らくその二通りじゃろう」


 最も可能性が高いのは、王都の教会地下深くじゃな。暗き闇を封印をした神官がいた教会であり、最も警備が厚く優秀であり、教会が有する戦力が多く投入されておる場所。優秀な腕利きが多く所属しており、教会が信仰しておる神の教えや、シスターや司祭たちを守る矛にして盾となる存在。幾多の障害から長きに渡り教会と神の教えを守ってきた、教会が言う所の神に祝福された特別な騎士たちじゃな。

 次に可能性が高いのが、王城の地下もしくは人目の付かない場所じゃ。その理由は、アイオリス王国王族の直系、陛下や王子たちが受け継いできた血筋が、古き勇者のものであると儂らが予想しておるからじゃ。確固たる証拠は今の所ないが、闘技場で暗き闇に付き従うあの二人に王子たちが狙われた事から、直径王族が古き勇者の血筋なのではないのかと儂らは考えた。

 そして、暗き闇の封印を解く方法もある程度予想が出来た。古来より封じられた悪しきものを解き放つには、生贄や人柱と呼ばれる存在、つまりは誰かの血肉を求められる。その事から、封じられている杖から暗き闇が解き放たれるには、実際に暗き闇を封じた神官の直系の末裔の血肉か、勇者たちの直系の末裔の血肉が必要となる。もしくは、それら直系の末裔全員の血肉じゃの。だからこそ、二人の王子が狙われたのだろう。


「ラインハルトは、もしもの時の為に準備を進めておくんじゃ」

「了解です。それと並行して、私の方でも直系の末裔を探してみます」

「頼んだ。ローザの方は、戦闘用から防衛用の魔道具まで、各種大量に取り揃えておいてくれるかの」

「分かったよ。店や工房に戻り次第、私ら一族総出で動き出す」

「宜しく頼む。儂の方もカノッサ公爵夫妻と協力して、色々と王都を探ってみる。各自何かあったり分かったら、それぞれ直ぐに連絡をくれ。直ぐに力になるからの」

「分かりました」

「何かあったら、十分に賢者の力を頼らせてもらうよ」

「うむ、任せておけ」

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