第202話

「ウォルター、今日一日魔法学院を経験してみてどうでしたか?」

「まあウォルターの顔を見れば、どう思ったかなんて丸分かりだけどね」

「私も賢者様から教えを受ける様になってから、ウォルターと同じ気持ちになりました」

「そうですよね。先生たちの授業も高い水準ではあると思いますが、正直言って悪いですけど、賢者様の授業に比べると雲泥の差です」

「イザベラたちもそう思ってたんですね。幼い頃からジャック爺に魔法について教わっていた身からすると、生徒たちと先生のあの一連のやり取りや、魔法の教え方なんかが何かの茶番劇の様に見えてしまって……」


 俺の答えに、イザベラたちも苦笑しながら同意してくれる。それに酷かったのは先生だけでなく、一緒に授業を受けていた生徒たちの方も結構酷かった。言い方は悪いのだが、魔法学院に一年在籍していて、一体何を教わり何を学んできたんだろうかと思った。魔力操作や制御が甘く、さらには魔法陣の展開・発動速度も遅く、色々と未熟であると言わざるを得ない。ただ比較対象がジャック爺やカトリーヌ、それから故郷のベイルトンの友人である魔法使いたちであるので、多少厳しめである事は自覚している。それでも貴族の子息・子女であり、幼い頃より英才教育を受けてきた者たちであると考えてしまうと、いささか物足りないと感じてしまう。


「私たちの教室は貴族で固められているから、余計にそう思ったでしょうね」

「あの人たちも努力してないとは言わないけれど、一般生徒たちに比べたら甘いわよね」

「一般生徒の方たちは、狭く厳しい門を潜り抜けて魔法学院に入学していますからね」

「それに加えて良い成績で魔法学院を卒業出来れば、学院側で良い条件の就職先を用意してもらえますから、皆さん血のにじむような努力をしています」

「野心の強い一般生徒になると、王城勤めの魔法使いになるために、成り上がりを目指して必死に勉強していますからね」

(やっぱり、どんな世界でも下剋上を目指す人ってのはいるんだな)


 今回は貴族の子息・子女の魔法実習の様子を見学させてもらえたので、もし機会があるのなら、次は一般生徒たちの魔法実習の様子も見学してみたい。彼ら彼女らが、貴族の子息・子女たちに比べてどれ程なのか気になる。

 暗き闇やそれに付き従う者たちと戦いになった時、魔法学院の生徒たちも戦いに召集される可能性が高く、貴族の子息・子女だけでなく、一般生徒たちとも一緒に戦う事になるかもしれない。その時の為にも、一般生徒たちの実力の程も知っておきたい。知っているのと知らないのとでは、実際にその時を迎えた時に何かを任せたり、どの程度頼ってもいいのかの判断が変わってくるからな。

 その後もイザベラたちと魔法学院の話をして、色々な事について情報を共有した後、お菓子と紅茶を楽しみながら談笑して過ごした。そして、最後には皆一緒にベッドで横になって、イザベラたちとイチャイチャ仲良くしながら眠りについた。

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