第201話

 昼食を済ませた後、待ちに待った魔法実習の時間となり、少しウキウキとした気持ちで先生が闘技場に来るのを待っている。イザベラたちの話によると、魔法学院の二年目の魔法実習ともなると、広範囲で威力の高い魔法も学び始めるとの事。この場にいる他の生徒たちがソワソワしているのも、派手でカッコいい魔法を学ぶ事が出来るのが嬉しいからだろう。俺個人としては、派手でカッコいい魔法であったとしても、当たらなければどうという事はないと思っている。ただ見ている分には楽しいし、下手な事言って波風立たせたくないので、静かに黙って見学している事にする。


「諸君、待たせたな。早速だが授業の方を始めていこう。今日の授業は、広範囲の火の属性魔法となる。私の土の属性魔法で的を生み出すので、各自それに向かって火の属性魔法を放っていく様に」

『はい!!』

「それでは、まずは私が見本を見せよう」

(おいおい、魔法の危険度の高さを説明したり、暴発の際にどの様にするのかの説明もなしか。この先生、本当に大丈夫なのか?)


 そんな不安を抱きつつも、特に何かを口出しする事なく、魔法実習を見守る姿勢を崩さないでおく。魔法実習を担当する先生が、土の属性魔法で次々と的を生み出していき、その的の内の一つに向かって火の属性魔法を放つために魔法陣を展開する。生徒たちはそれを感動した様に見ているし、先生は先生で生徒たちの反応に嬉しそうにしている。


(嬉しそうにチラチラと生徒たちを見るな!!魔法陣の制御に集中しろ!!)


 どうやらこの先生は、少しばかり真面目さに欠ける先生の様だ。俺の強い不安が伝わったのか、イザベラたちがチラリと視線を送ってきた。イザベラたちの視線から、冷静になって落ち着く様にと伝えてきているのを感じたので、ゆっくりと自分の感情を静めていく。

 上機嫌な先生は魔法陣にさらに魔力を込め、強化した火の属性魔法を土の的に向かって放つ。発動した魔法陣からは、膨大な魔力と共に炎の渦が生み出され、土の的へと真っ直ぐに向かって進んでいく。炎の渦は高温の熱と強烈な熱風を周囲に放ち、土の的へと直撃して爆発し、強力な爆炎で土の的を焼き尽くしていく。土の的は爆炎によってドロドロに溶けていき、さらには周囲の地面も爆炎によって溶かし、急速に冷えてガラス状に固まっていく。先生の放った火の属性魔法を見た生徒たちは、周囲を巻き込む程の広範囲や、土の的や地面すらも溶かす威力に驚きの声を上げる。


「この様に、周囲を巻き込む程広範囲であり、跡形もなく溶かしてしまう程の威力を有している。魔物相手にこの魔法を放てば、どんなに硬い皮膚だろうと魔力障壁だろうとも燃やし尽くし、その存在ごと綺麗さっぱり消し去るだろう」

『おお~!!』

「この魔法を放てる様になれば、諸君らはまた一歩素晴らしき魔法使いへと近づける。それでは諸君、各自的に向かって魔法を放っていきなさい」

『はい!!』

(…………なんか思ってたのと違う。ジャック爺の授業みたいのを想像してたんだが……。何かの茶番劇を見せられてるみたいだ。これがこの国の、王都の魔法学院の魔法実習なのか?……本当にこの国大丈夫なんだろうか?)

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