第200話
カノッサ公爵家の馬車から俺とイザベラが降りると、周囲の貴族家の者たちや魔法学院の生徒たちが騒めきながらこちらを見て、俺たちの動きに注目する。そんな者たちの視線を気にする事なく、俺たちはカノッサ公爵家の屋敷に帰っていくセバスさんを見送り、クララたちのいる学生寮に向かって歩みを進める。
「あ、来た来た。イザベラ、ウォルター、おはよう」
「皆さんおはようございます」
「おはよう、クララ。マルグリットもナタリーもね」
「おはようございます」
「イザベラ様、おはようございます」
「ナタリー、様はもういらないわよ」
「ふふふ。そうでしたね、イザベラさん」
ナタリーは嬉しそうに微笑みながら、イザベラに向かってさん付けで返し、イザベラもそれにニッコリと微笑んで返した。イザベラとナタリーのやり取りを聞いていたマルグリットたちも、二人の様子に微笑ましい笑顔を浮かべている。
「それじゃあ皆、行きましょうか」
イザベラたち四人と護衛の俺を合わせた五人で、魔法学院の校舎内へと入っていく。学生寮でも注目を集めていたが、この移動中も同じく注目を集めていたが、お構いなしに四人は女子トークを繰り広げている。聞こえてくる範囲の内容では、今度のお買い物デートで俺に着せてみたい服やら、オシャレなカフェに新作のお菓子やスイーツが発売されたなど、本当に様々な話題について話している。
現在マルグリットは一般生徒という扱いになっているが、魔法学院の学院長にカノッサ公爵が直々に養女にする事を説明した事で、特例でナタリーやクララの部屋で暮らしている。マルグリットやカノッサ公爵の話によると、もう少しで養女に関する全ての手続きが終わるとの事で、終わり次第カノッサ公爵家の屋敷に移り住む様になるそうだ。それから、ナタリーやクララも俺との婚約の関係から、マルグリットと同じ様に学生寮から移り住み事になっている。
俺たち五人が、正確には俺が教室に入ると、騒がしかった教室は一瞬で静まり返る。生徒たちからは、興味深そうに見てくる視線や、嫉妬や嫌悪の感情による睨みつける視線など、様々な視線を向けられる。興味深そうに見てくる生徒たちは、恐らくこちらに友好的もしくは中立の立場の生徒。そして嫌悪の感情によって睨みつけてくる生徒たちは、アルベルト殿下や側近たちの熱狂的なファンか、カノッサ公爵家の派閥と敵対している貴族家の子息・子女だろう。
「あれは確か…………」
「……間違いない。あいつは、あの男は、アルベルト殿下たちを
「私も、あんな強くて優しい男性と出会いたい」
「そうよね。本当にイザベラ様たちが羨ましいわ」
教室に入る前とは違う、様々な感情による騒がしさが広がっていく。色々な立場の生徒たちの感情が入り混じり、少し混沌とした空気となっている。少しずつ騒がしさが大きくなっていくが、教室に一人の成人男性が入ってきた事で、騒がしさが一瞬で静まり返る。
「皆さんおはようございます。事前に連絡してあった通り、今日は昼食後に魔法実習があります。ですので、時間や場所を間違えない様にしてください」
成人男性はそう言って、サッサと教室から出ていってしまった。イザベラたちに男性が誰なのかを聞くと、この教室を担当する先生であるそうだ。ただ、やる気というか生徒個人個人に興味があまりない様で、何時もあの様な感じであるらしい。
それにしても、昼食後に魔法実習か。当然だが初めて見るものなので、どの様に授業を行うのか非常に興味がある。魔法学院の魔法実習ならば、先生が色々な魔法を見せてくれるだろうし、豊富な魔法の知識を披露してくれるだろう。俺は魔法実習がどんなものになるのか期待しながら、授業を受けるイザベラたちを静かに見守り、騎士として護衛の役割に徹した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます