第198話
イザベラ嬢の騎士となる事を決めてから、学院長室で学院長と共に略式での卒業式を終え、カノッサ公爵家へと急いでとんぼ返りした。ジャンやマークといった友人たちに、ちゃんと説明出来ずに事を進める事に申し訳ない気持ちになるが、今は時間が惜しい。誰にも気付かれない様に騎士学院から抜け出し、王族たちが遣わしたであろう影の者たちの監視を
カノッサ公爵家の屋敷に到着して直ぐに、カノッサ公爵たちに今回の騎士学院での経緯を説明し、イザベラ嬢を魔法学院から呼び戻してもらった。それからカトリーヌさんにも屋敷へと来てもらい、イザベラ嬢とカトリーヌさんの二人にも、今回の経緯やこれから何をするのかを教えた。そして、俺を含めた八名で騎士叙任式を始めた。
「これより、我が娘イザベラの騎士となる、ウォルター・ベイルトンの騎士叙任式を行う。イザベラよ」
「はい」
カノッサ公爵の呼びかけにイザベラ嬢は答え、公爵家の屋敷にある謁見の間の上座へと立つ。服装は魔法学院の制服のままだが、その表情と雰囲気は真剣なものであり、凛として立っているその姿は正しく公爵家の令嬢に相応しい。
「ウォルター・ベイルトン。私の前に」
「はい」
俺はイザベラ嬢の凛々しい声に従って足を進め、謁見の間の上座に立つイザベラ嬢の前に
「誓いの言葉を」
「我、ウォルター・ベイルトンは、イザベラ・カノッサ様に愛を誓います。どんな時も傍で支え、どの様なものからも守り抜きます。…………皆と一緒に、笑顔の溢れる家庭にしていきましょう」
誓いの言葉の最後に伝えた俺の言葉に、イザベラ嬢のみならず、騎士叙任式を見守っていたジャック爺たちも、思わずその顔に笑みを浮かべて笑い声をあげる。真剣な雰囲気だったものが少し緩い雰囲気となったが、イザベラ嬢はその顔にニッコリとした笑みを浮かべたまま、上機嫌に剣の平で俺の肩を叩く。
「ウォルターさん、私たち皆で幸せになりましょうね」
「はい。必ず」
そして、騎士叙任式の最後の仕上げに入る。イザベラ嬢は、カノッサ公爵家の紋章が刺繍された騎士のマントをカノッサ公爵から受け取り、跪く俺の肩にマントを羽織らせる。イザベラ嬢は腰の鞘に剣を戻し、俺に向かって微笑みながら右手を差しだしてくる。俺はその右手を優しく掴んで立ち上がり、イザベラ嬢に微笑みを向ける。
「今ここに、我が娘イザベラの騎士が誕生した。皆、イザベラとウォルターの二人に祝福を。……おめでとう、二人とも」
「ありがとう、お父様」
「ありがとうございます」
「皆で一緒に、家族として支え合っていくのよ」
「「はい」」
カノッサ公爵夫妻の祝福と激励に続き、ジャック爺も祝福の言葉をかけてくれるし、ローザ・‟ナターシャ”・アウレリアとラインハルト王弟殿下の二人も祝福してくれる。そして、カトリーヌさんは祝福の言葉と共に、俺とイザベラ嬢の肩を抱き寄せて微笑んでくれる。こうして俺は、騎士学院を卒業したその日の内に、イザベラ・カノッサ嬢の、生涯をかけて守る愛しい彼女の騎士となった。
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