第197話

 ナタリーさんを巡る決闘が終わった夜、カノッサ公爵家の屋敷で皆揃って祝勝会をした。改めてコーベット男爵夫妻にお礼を言われ、ナタリーさんには抱き着かれて愛を伝えられた。ローザ・‟ナターシャ”・アウレリアとラインハルト王弟殿下の二人も祝勝会に参加し、ジャック爺と楽し気に談笑しながら、豪勢な料理やお酒を飲んで楽しんでいた。皆笑顔で祝勝会を楽しみ、決闘に勝利した事を喜んでその夜を過ごした。

 そんな楽しい祝勝会を過ごした翌日、俺は騎士学院に登校したら学院長に呼び出された。一体何の用事なのかと学院長室に向かうと、そこには険しい顔をした、不機嫌な様子の学院長が執務机の椅子に座っていた。


「ウォルター、来たか」

「お呼びとの事ですが、一体何かありましたか?」

「ああ、あったさ。先程まで王城からの役人が来ていてな」

「王城の役人がですか?」

「そうだ。奴ら、終始高圧的で嫌味ったらしくてな。ぶん殴るのを何度も我慢したぞ」

「ご苦労様です。それで、俺を呼んだ理由は一体何なんです?」

「おお、すまんすまん。……それでその役人が来た用事ってのが、ウォルターに関する事でな。役人の奴、ウォルターを騎士学院から即刻卒業させて、王族の誰かの騎士にさせよとか言ってきたんだよ」

「!?…………早速、権力を使って仕掛けてきたという事ですか」

「その様だな。腐ってもここは王立の学院。今回は王族という権力を利用して、俺たちにウォルターの人生を滅茶苦茶にしろと口を出してきた」

「学院長は、役人にどの様な返事を?」

「返事どころか、一方的に後日王城に来させる様に告げて、そのまま帰っていきやがったよ。役人の奴、王族に心酔してそうな奴だったからな。俺もウォルターも逆らわないと思ったんだろう。それで、どうする?」

「そんなもの従う訳ないじゃないですか」

「何か手があるのか?もしかして……」

「ええ、学院長の想像通りです。騎士学院を卒業となれば、学生でなくなった俺の立場は完全に自由になります。なのでそこを狙って、こちらから先手を打ちます。俺は、――――イザベラ・カノッサ嬢の騎士になります」


 向こうが無理やり学院を卒業させて、王族の誰かの騎士に任命させてくる前に、こちらから先にイザベラ嬢の騎士になる事で奴らの思惑を潰す。カノッサ公爵家を含む各公爵家は、王族直系の血も引く純王族的な扱いと立場だ。侯爵以下の貴族家の騎士となるとなれば、確実に王族たちの権力によって阻まれてしまうが、公爵家の騎士になるとなれば安易に手を出す事は出来ない。王族の血も引く公爵家に下手に干渉すると、最悪の場合クーデターを起こされて、自分たちの地位や権力を奪われ失ってしまうからな。


「寧ろこれは好機なのかもしれません。正式な騎士となれば、魔法学院にも護衛として付いて行く事が出来ますし、イザベラ嬢のみならず、ナタリー嬢も守りやすくなります。ですので学院長、このまま騎士学院から俺を卒業させてください」

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