第182話
「白き
「ジャック爺!!黒い羊たちの方も、魔法で雷放ってこようとしてる!!」
「広範囲の魔法による一斉攻撃よ!!イザベラたちは何が起こってもいい様に、各自魔力障壁を展開して防御に専念!!」
『了解!!』
「儂とカトリーヌお嬢さんで雷の魔法を対処する!!ウォルター、氷柱は任せる!!」
「任せて!!」
八十階層の階層主である、白き体毛に黒の
雪豹はスピードタイプの魔物で、高速機動と強化した爪や牙によるヒットアンドアウェイの戦法を取りつつ、威力と速度を兼ね備えている氷の属性魔法を放ってくる。対する黒き羊の方は固定砲台の魔法使いタイプの魔物で、速度と威力で魔法を使い分ける戦法で戦場一帯を広範囲に攻撃しつつ、さらには身体強化の魔法と雷を纏った状態での突進もしてくる。どちらも攻守共にバランスがよく、攻撃が通りにくい魔物たちだ。
迫りくる視界を埋め尽くす雷を、ジャック爺とカトリーヌさんが魔力を混ぜ合わせて一つの魔力障壁を展開し、人一人を簡単に消し炭に変える雷の全てを受けきる。だがその雷の後ろから、幾つもの太く大きい氷柱が迫ってきている。そちらの対処は俺の役目だ。
「――――ハァッ!!」
右手に持つロングソードを高速で振るい、氷柱に向かって巨大な魔力の斬撃を幾つも飛ばしていく。魔力の斬撃は迫りくる氷柱に真っ直ぐに向かって行き、氷柱を綺麗に切り裂いてバラバラにしていく。バラバラにされた氷柱は、氷の塊となって地面へと落ちていく。俺は一気に加速し、落ちていく氷の塊に向かっていく。駆けながら左手に魔力を集中させ、魔力で巨大なハンマーを形作る。そして左腕を大きく後ろに引いて力を溜め、落下してくる氷の塊に向かって勢いよく振るい、氷の塊を雪豹たちや黒き羊たちに向かって吹き飛ばしていく。
目にも止まらる速さで氷の塊が飛んでいき、次々と雪豹たちや黒き羊たちに襲い掛かっていく。雪豹たちや黒き羊たちには魔法を使って迎撃されるが、氷の塊を吹き飛ばして倒す事が目的ではないので問題ない。ジャック爺やカトリーヌさん、イザベラ嬢たちが体勢を立て直せる時間を稼ぎつつ、雪豹たちや黒き羊たちの足をその場に留めておく事が重要だ。
「ウォルター、あともう少しだけ足を留めておくんじゃ!!」
「了解!!」
ジャック爺からの要請に応える為に、氷の塊を吹き飛ばすペースを上げていく。雨霰《あめあられ》の様に襲い掛かる氷の塊に、雪豹たちも黒き羊たちも流石に足を止めざるを得ない様だ。そのまま氷の塊を吹き飛ばすのを続けて時間を稼いでいると、背後から膨大で質の高い魔力が溢れ出ているのを感知する。どうやら、時間稼ぎは十分に出来た様だ。そう確信した俺は、残っていた全ての氷の塊を一気に吹き飛ばして後ろに下がる。
それと同時に、炎で形作られた狼と鷹の群れが俺の傍を通り抜けて、雪豹たちと黒き羊たちに襲い掛かっていく。炎の狼は黒き羊たちを仕留めに動き、それを阻止しようとする雪豹を、炎の鷹が上空から牽制して動きを止める。
ジャック爺とカトリーヌさん、イザベラ嬢たちはさらに魔力を高めていき、周囲に色とりどりの魔法陣を展開していく。そして、それら魔法陣を一斉に発動して、空間全てを埋め尽くす程の魔法を雪豹や黒き羊に放つ。
「加えて、儂とカトリーヌお嬢さんの合成魔法――――」
「――――――――真紅の不死鳥!!」
ジャック爺とカトリーヌさんの頭上に、二人の魔力が混じり合った巨大な魔法陣が展開され、そこから真紅の炎で形作られた巨大な不死鳥が現れる。真紅の不死鳥は炎の翼をはためかせながら大きく咆哮を上げ、その身を構成する真紅の炎をさらに燃え上がらせ、嘴を大きく開けていく。大きく開いた嘴に真紅の炎の球体を生み出し、炎の翼からチリチリと高圧縮された小さな炎が生み出され、真紅の不死鳥の周囲をユラユラと揺らめいている。
そして嘴から真紅の炎の球体を放つと同時に、炎の翼を一度大きくはためかせ、高圧縮した小さな炎を雪豹たちと黒き羊たちに向けて放つ。放たれた真紅の炎の球体や小さな炎たちは、幾つもの魔法をその身に受けて傷ついていた所へ一気に襲い掛かり、ダメ押しとなって一気にダメージを与えていく。真紅の炎の球体と小さな炎の熱量は凄まじく、雪豹たちと黒き羊たちの全てを燃やし尽くし、そこには消し炭どころか何も残る事はなかった。
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