第178話
蛇は口から毒液を吐き出し、全身を鞭の様にしならせて尻尾を振るい、風や闇の属性魔法で広範囲攻撃を放ってくる。蛇の魔物の毒は猛毒で、身体に出来た傷口に僅かでも接触すれば、そこから一気に毒が回って身体が
〈蛇は残り二匹。体全体は傷だらけのボロボロで、あと一押しで二匹とも倒せるな。ただ陸亀の方は、結構なダメージを与えているが未だにピンピンしている。残った蛇二匹の方を一気に片付けて、陸亀三匹だけに意識を集中させよう〉
「蛇の動きを止めます。二匹の蛇に魔法を打ち込む準備を」
『了解!!』
「分かったわ」
「うむ、任せろ」
俺はロングソードを一旦鞘の中に戻し、今度は両手に魔力を集中させて、魔力の形を与えていく。先程は縄を模したが、今回は鎖を模した。幾つもの魔力の鎖を、両手から勢いよく伸ばしていき、二匹の蛇の体に魔力の鎖を巻き付けていく。魔力の鎖の先端には刃があり、二匹の蛇の体全体を拘束した後に地面に突き刺して固定してする事で、その場から完全に身動き出来ない様にさせた。
そこへ間髪入れずに、ジャック爺たちの高威力の魔法が蛇に向かって一斉に襲い掛かる。巨大な火球や岩石などが、二匹の蛇の体を燃やし貫いていき、確実に致命傷を与えていく。二匹の蛇も魔物としての再生能力で生き残ろうとしたが、絶え間なく続く魔法に再生能力が追い付かず、その命の灯が消え去り地に倒れ
「よし、蛇二匹は仕留めたの。残りは亀三匹じゃな。まずは機動力を奪う為にも、四つの足を重点的に狙っていくんじゃ。焦らずじっくりと攻めて、一匹ずつ確実に仕留める」
『はい!!』
「私とウォルター君は、前に出て亀の意識を引きつけましょう」
「了解」
カトリーヌさんと共に前に出て、まずは一番手前にいる陸亀に向かって行く。右手には鞘から抜き放ったロングソードを持ち、左手には魔力で形作ったグレートソードを持って、陸亀へと一気に加速してこちらから仕掛ける。陸亀は迫る俺とカトリーヌさんに向けて、土の属性魔法で巨大な岩石を放ってくる。放たれた岩石を全て避けながら前に進み、俺とカトリーヌさんは陸亀の足元に到達した。
ロングソードの剣身に膨大な魔力を纏わせて強化し、振り抜く際に剣先から魔力の剣身を伸ばし、陸亀の右前足を深く大きく切り裂く。そこに魔力のグレートソードを振るい、太く硬い右前足を綺麗に切断する。カトリーヌさんも、魔力で形作った二つの剣を振るい、太く硬い左前足を綺麗に切断した。両前足を切断され失った陸亀は、ぐらりと体制を崩して前のめりに倒れていく。そんな陸亀の無防備な姿を見逃す事なく、ジャック爺とイザベラ嬢たちが放った魔法が集中砲火し、一匹目の陸亀の命の灯を消し去った。
「このまま残り二匹の亀も仕留める!!」
俺とカトリーヌさんは、今度はそれぞれ一匹ずつ、陸亀の足元に向かって駆ける。陸亀二匹は最初の一匹とは違い、無数の小さい岩石の塊や、幾つもの岩石の槍を一斉に放ってくる。それらを、左右に持つロングソードと魔力のグレートソードで切り払いながら、陸亀の足下に向かって前に進んでいく。
「――フッ!!――――ハッ!!」
先程の陸亀と同じく、最初に一振り目で深く大きく切り裂き、二振り目で太く硬い左前足を切断する。そのまま右前足の足元へと移動し、流れる様に右前足も切断する。陸亀も魔力障壁を展開して防ごうとしてきたが、あの暗き闇に比べた紙装甲にも等しく、魔力障壁ごと両前足を切断した。このままでも楽に仕留められるのだが、念には念を入れて後ろ足も両方切断する。
陸亀はものの数十秒で全ての足が切断された混乱と、切断された事による痛みに
「キュ――――!!」
陸亀は大きく咆哮を上げて、魔力の砲弾をジャック爺たちに向けて放った。もし直撃すれば、ジャック爺たちと言えども無事では済まないだろう。ならばこそ、それを止めるのは俺の役目だ。ロングソードと魔力のグレートソードに魔力を込め、それぞれの剣身を大幅に強化し、魔力の砲弾へと向かって跳び上がる。
「――――――ハァッ!!」
目にも止まらぬ速さで二振りの剣を同時に振るい、斜め十字の魔力の斬撃を魔力の砲弾に放つ。魔力の砲弾と斜め十字の魔力の斬撃はぶつかり合い、魔力の反発によって辺りに放電が起きる。しかし、徐々に魔力の砲弾を斜め十字の魔力の斬撃が切り裂いていき、最後には魔力の砲弾を斜め中に綺麗に切り分けた。切り分けられた魔力の砲弾は、ジャック爺たちから離れた位置に着弾し、陸亀の意地の一撃は不発に終わった。全ての力を出し切りぐったりとする陸亀に、ジャック爺やイザベラ嬢たちの魔法が直撃し、二匹ともその命の灯が消え去った。
そして最後の二匹の陸亀を仕留めた事で、階層主への挑戦をクリアしたというのをダンジョンが判断し、仕留めた魔物の体が消えて肉がドロップした。どの肉も豊富な魔力が含まれており、きめも細かく柔らかいのが分かる。四十階層でこの肉となると、深層の肉はさらに期待大だな。
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