第150話
息つく間もなく、
基本的な攻撃方法としては、失った両腕の代わりに生み出した、暗き闇によって形作られた腕での攻撃が主だ。それと同時に、所々で魔法を併用して不意打ちの一撃も仕掛けてくる。しかも、放たれる魔法のほぼ全てが死角からの攻撃なので、一切気を抜く事が出来ない。
(粗暴な男の戦い方をしながらも、粗暴な男の身体を使っている誰か本来の戦い方も織り交ぜてくる)
何者かは一瞬で俺の正面に現れると、右腕を形作っている暗き闇が一気に膨れ上がらせ、巨人の腕の如き大きさに変化させて拳を放ってくる。あの漆黒の爆炎の時と同じ様に、視界を暗き闇の拳で覆い尽くされる。
俺はゆっくりと深呼吸を一度繰り返し、目にも止まらぬ速さでロングソードを振り抜き、暗き闇の拳を十字に切り裂く。だが、ここまでの戦いから学んだ経験から、十字に切り裂いた程度で終わる事がないのは分かってる。その予想通り、十字に切り裂かれた暗き闇の拳は直ぐさま形状を変え、四つの暗き闇の拳となって変わらず迫ってくる。
迫ってくる暗き闇の拳を切って迎撃するのを止め、両脚にさらに魔力を込めて脚力を強化し、一気に加速してその場から掻き消える。そして一瞬で背後を取り、そのまま一歩前に右脚を踏み込み、左薙ぎの一振りでその首を狙う。
だが、ロングソードの刃は何者かの首を刎ねる事なく、暗き闇によって阻まれていた。何者かはその場から微動だにする事なく、左腕を形作っている暗き闇を半球状の卵の殻みたいな形に変化させ、ロングソードの刃を止めたのだ。俺は両脚と同じ様に右腕にさらに魔力を込めて強化するが、ロングソードの刃が進む事はなく、卵の殻の様に変化させた暗き闇に傷が付く事もない。
「――――チッ!!」
動きの止まった俺に向かって、何者かは右脚を後ろに引いて時計回りに身体を回転させながら、暗き闇の右腕を高速で振るってくる。暗き闇の右腕は先程まで四つに分裂した拳だったのに、一瞬でその形状を巨大で薄い大剣の刃へと変化している。そして、狙いは俺の首。
振るわれる暗き闇の刃を、俺は背中を後ろに反らしてギリギリで避ける。だがそこに、何者かの追撃の一撃が迫りくる。何者かは、暗き闇の左腕の形状を再び変化させ、上空から巨大な
(――――俺が避ける事も織り込み済みか!!)
避けられた暗き闇の刃と戦槌がそれぞれ無数の針へと形状を変え、空中にいる俺に向かって急速に迫ってくる。俺はロングソードの剣身に攻勢の性質に変化させた魔力を纏わせ、それと同時に左手に魔力を集めて、攻勢の性質の魔力で魔力の剣を形作る。
「――!!――!!――――!!」
俺を串刺しにせんとする無数の針を、ロングソードと魔力の剣を高速で振るい続け、迫る無数の針の全てを切り裂いていく。だが、切り裂いても切り裂いても再生成させれ、無数の針による攻撃が止まる様子はない。
地面に両脚が付くまでに、暗き闇の針を
「なる程。空間を遮断し、そのまま暗き闇を圧縮する事で、俺を肉塊に変えるつもりか」
左手に持つ魔力の剣を消し去り、ロングソードを地面に突き刺す。瞳を閉じ、魔力を一気に高めながら、剣を上段で構える様に両腕をゆっくりと振り上げていく。意識を集中し、高めた魔力を両手に集め、その魔力に形を与えていく。その際にイメージするのは、自分にとっての最強の一振り。
ロングソードに比べると、直ぐにでも折れてしまいそうな細い刃。だが鍛えに鍛え抜かれた鋼によって生み出されたその刃は、鈍い
俺は閉じていた瞳を開く。両手で日本刀の柄を握り、スーッと唐竹割りで振り下ろす。チリンという鈴の音が響き、空間を遮断する暗き闇に一筋の線が刻まれる。そして、俺の前方の暗き闇が斬り裂かれ、遮断していた空間が開いた。斬り裂いた暗き闇から一気に加速して抜け出し、何者かに向かって距離を詰める。何者かは、再び暗き闇を防御形態に変化させる。
「――――甘い!!」
右脚を前に踏み込み、姿勢を低くして重心を前に傾けながら、左腕を曲げて後ろに引き、日本刀を持つ右腕を左の腰の位置に持っていき構える。そして、暗き闇の盾に向かって一瞬で抜刀する。魔力で作られた日本刀の刀身は、何の抵抗もなく暗き闇を斬り裂き、そのまま粗暴な男の身体を右脇腹から左肩にかけて斬り裂いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます