第147話
下で戦っておったウォルターの相手の魔力が、人とは思えぬ様な魔力へと突如変化した。ここまで魔力が変化しとると、外見は同じであったとしても、中身はまるで別人の様に感じる。ウォルターは、一体何と戦っておるんじゃ?
「――チッ!!あそこまでいい様にやられるとは。中々に計算外だ。だが、ああなってしまったらもう止められはしない。お前も、下の剣士も、この場にいる者たちも全て、あの御方に遊ばれて死ぬ。それは変えられぬ事実、いや、未來だ。そして、お前が私に敗れて死ぬのも変えられぬ未来だ!!」
「
若造の周囲に、漆黒の魔法陣が幾つも展開される。その一つ一つから感じられる魔力は、下の若造の変化した魔力と同じものを感じるの。恐らく、目の前の若造とウォルターと戦っている若造は、何かしらの存在から力を借りているのじゃろう。そうでなければ、これ程まで禍々しく冷たい魔力を発する事など出来んの。
漆黒の魔法陣全てから、膨大な魔力を感じる漆黒の雷が生み出される。そして、生み出された全ての漆黒の雷が一点に集中し、巨大化して一つの巨大な雷の球体となる。そこからさらに、若造が巨大な雷の球体に魔力を込めていく。すると、巨大な雷の球体の形状が変化する。
最初に、球体から斜め十字に四つの棒状の突起が現れる。そのまま棒状の突起がさらに形を変え始めると同時に、球体の部分もその形を変え始める。棒状の突起は
手足には鋭き
「雷で形作るワイバーンとはの」
「あの御方にお褒めいただいた魔法。貴様の死に相応しい魔法だ」
若造が誇らしげにそう言い、雷のワイバーンは大きく口を開けて威嚇してくる。それに対して、儂は頭上に
「……本当に舐められたもんじゃの。言っては悪いがの、雷でワイバーンを形作った所で本物に遠く及ばぬし、儂の
「な!?――――ドラゴンだと!?」
発動した魔法によって生み出されたのは、雷のワイバーンを大きく上回る大きさに、圧倒的な存在感と冷気を放つ紺碧のドラゴン。雷のワイバーンと違って翼と腕が分かれており、牙も鉤爪もワイバーンよりも太く鋭く、背に生える翼も尻尾も巨大。その姿は、ドラゴンとは、最強の生物とはこうであるというものを
「魔法陣一つで、氷のドラコンを生み出す。そして、生み出すのにかかった時間はほんの数秒。それに、外見だけの張りぼてではない、本当にドラゴンが生きているかの様に滑らかな動き。…………まさか、お前は本物のドラゴンをしっ――――」
「ワイバーン程度、ドラゴンの足元にも及ばぬ。――儂は『賢者』ジャック・デュバル。賢者という称号も、最強という称号も、どちらも貴様程度が簡単に手に出来る程軽いものではない。それを、今から嫌という程貴様に叩き込んでやるとしよう」
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