第146話
視界を埋め尽くした漆黒に対して、俺の身体が本能によって自然と反応し、素早く後ろに一歩引いて、漆黒の爆炎との間に空間を作り出す。そして、
攻勢の魔力に性質を変化させると、物質として非常に脆くなる代わりに、魔力による一撃のダメージが大きく上がる。一撃一撃ごとに魔力を纏わせ直さないといけないが、その一撃による威力は絶大だ。魔力そのものを切る事が出来るので、物理・魔法問わずあらゆる守りを切り裂き、上位属性魔法や複合属性魔法すらも切り裂く切れ味を誇る。それは、主様とやらの魔力であっても変わらない。
「――――!!」
俺という存在を燃やし尽くそうとしていた漆黒の爆炎は、ロングソードの刃によって綺麗に左右へと分かたれ、そのまま身体の左右を通って後ろへと流れていく。二つに分かたれた漆黒の爆炎は、後方で勢いよく燃え盛って黒き火柱を立ち上らせる。
「――な!?あれも対応すんのかよ!?」
今度はこちらから仕掛ける。一気に加速して粗暴な男との距離を詰め、一瞬で粗暴な男の正面に移動する。右腕を後ろに引いて力を溜め、粗暴な男の顔面に向けて高速の突きを放つ。
粗暴な男は、一瞬で距離を詰めてきた俺の動きに反応が遅れた。だが、そこは一流の戦士。ロングソードによる高速の突きである事や、狙いが自分の頭部である事を察すると、両腕を顔の前で斜め十字にして構え、ガントレットでロングソードの突きを防ごうとする。
「――――――フッ!!」
だが俺は粗暴な男が防御の体勢をとった瞬間、突きで攻撃するのを止めて、再び加速して移動して粗暴な男の背後をとる。眼前から俺の姿が消えたのを見た粗暴な男は、直ぐ様防御の体勢を
「――――――オラァ!!」
迫りくる右脚の蹴りに対して、俺は空いている左手に魔力を集めて、一振りの魔力の剣を生み出す。その一振りの魔力の剣は、ロングソードを模したものではなく、身の丈以上もある様な大きなのグレートソードだ。それも、性質を守勢に変化させた魔力で生み出した、防御に特化させた魔力の剣だ。
その魔力の剣を地面に突き刺し、幅広く分厚い剣身を盾代わりにして、右脚での蹴りを防ぐ。そして、粗暴な男の蹴りが魔力の剣とぶつかり合う。漆黒の爆炎と共に衝撃波が吹き荒れる。だがその衝撃波をものともせず、その場でロングソードを上段に振り上げ、ゆっくりと深呼吸をしてからスーッと
「――――――ハッ!!」
「お前、何し――――――ガァ!!」
ロングソードの剣身が完全に振り下ろされた瞬間、粗暴な男の左腕の肘が綺麗に切断され、肘から先が地面にボトリと落ちる。その瞬間、初めて切られた事を認識したのか粗暴の男は痛みに声を上げ、切断面から血がシャワーの様に噴き出してくる。
最初に一撃加えた時、追撃したい気持ちを飲み込んで、後ろに跳んで距離を取った。だが今回は違う。ここで退く事を選択する事はない。振り下ろした状態から右脚で一歩前に踏み込み、手首を返してロングソードを真上に切り上げる。
「――――!!」
「――グァッ!!」
今度は粗暴な男の右腕の肘が綺麗に切断され、肘から先が地面にボトリと落ちる。切断面からは、左腕と同じ様に血が勢いよく噴き出す。粗暴な男は、連続した痛みに堪らず声を上げる。だが突然ピタリと動きが止まり、上げていた声も止まる。そして、ゆっくりとこちらに顔を向ける。
粗暴な男の顔を見た瞬間、俺の全身からもの凄い勢いで冷や汗が出る。何故なら、両目が白目も黒目もなく、全てが黒く染まっていたからだ。心臓の鼓動が早まり、自然と呼吸が乱れてしまう。指一本、僅かでも動かす事が出来ない。いや、動かす事すらも危険だと本能が告げてくる。
(一体何が起きてる?いや、それよりも目の前に立っているのは誰だ?)
まるで別人になったかの様に、一瞬で雰囲気や魔力の質が大きく変わった。それに、あれだけ勢いよく噴き出していた血が完全に止まっている。しかも、切断面はそのままでだ。漆黒の火で傷口を燃やした訳でもなく、主様の力とやらを使った訳でもない。綺麗な切断面のままで、両腕から血が完全に止まっているのだ。
何が何やら全く分からず警戒する俺に向かって、粗暴な男の身体を使っている何者かは、
何者かは確認が終わると、先程よりももっと深く大きく弧を描いて笑みを浮かべる。そして全身から先程までとは比較にならない程濃密な、禍々しく冷たい魔力を放ってくる。どうやら、何者かに相手が変わっての第二ラウンド開始の様だ。
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