第139話
勝負に出たレギアス殿下の奥の手は、観客席にいる市井の者たちや貴族の者たち、カノッサ公爵夫妻やイザベラ嬢たち、俺やジャック爺を驚かせるものだった。さらには王城勤めの魔法使いたちや、王族たちに陛下も同じく驚いている。
「あの年で複合属性魔法を使えるとはの。学生の中で頭一つ抜けておるどころか、王城勤めの魔法使いたちよりも優秀じゃの」
複合属性魔法。読んで字の
面で攻める威力の高い魔法同士を混ぜ合わせれば、その威力は二倍・三倍にもなり、点で攻める速度の速い魔法同士を混ぜ合わせれば、その速度は二倍・三倍にもなる。さらに威力の高い魔法と速度の速い魔法を混ぜ合わせる事も出来るし、ジャック爺の様な熟練の魔法使いともなれば、二属性に
そして複合属性魔法とは、上位属性魔法と同等の習得難易度の魔法なのだ。つまり複合属性魔法を使うことが出来るレギアス殿下は、上位属性魔法を使う事が出来る可能性もあるという事だ。それはジャック爺の言う様に、学生どころか王城勤めの魔法使いたちよりも優秀だという事を示している。
「複合属性魔法が使える者と使えない者の戦いとなれば、王子の方が不利であり、勝ち目はほとんどないと言っていいの。ここから巻き返すのは難しいじゃろうな」
「複合属性魔法を使えないとして、この場面から一気に巻き返すためには何が必要?」
「儂ならば、ここから巻き返す事が出来る可能性が最も高い、上位属性魔法を選択するかの。属性の豊富さには劣るものの、威力と速度という点で見れば、複合属性魔法に引けを取らんからの」
ジャック爺の説明がフラグになったのかは分からないが、レギアス殿下の複合属性魔法を見たアルベルト殿下が一気に魔力を高め、上位属性魔法の術式を構築していく。そして、一つの魔法陣がアルベルト殿下の前に展開される。
「上位属性魔法の魔法陣!?」
「アルベルト殿下も使えるの!?」
「驚いたの。火事場の馬鹿力なのかは分からんが、ちゃんと上位属性魔法の魔法陣として機能しておる。じゃが、あまり安定しておらん。暴発や不発に終わる可能性が高いが、さて…………」
『うぉおおおおおお!!』
アルベルト殿下が大きな
レギアス殿下の放った闇と火の混じり合った漆黒の火球と、アルベルト殿下の放った上位属性魔法の光のビームが、闘技場の真ん中で真正面からぶつかり合う。そのぶつかり合いは凄まじく、大きな衝撃波が観客席に吹き荒れる。両殿下は気迫のこもった雄叫びを上げながら、放った魔法に向けてさらに魔力を込めていく。
すると、徐々にレギアス殿下とアルベルト殿下の魔力が反発し合い、バチバチと周囲に激しく放電し始める。そして魔力の反発と放電が最も強まった時、ピカリと大きな光を煌めかせ、轟音を鳴り響かせながら、闘技場の真ん中で大きな爆発を起こした。
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