第134話
まだ大トリである第五戦が始まって四・五分しか経っていないが、ニースレイノ魔法学院の主将の男子生徒と、レゼルホルン魔法学院のイケメン君のどちらが優勢なのかは、誰が見ても一目瞭然といった状況になっていた。
そしてそれは、ニースレイノ魔法学院の主将の理知的な表情が崩れている事から、その場にいる本人たちも、どちらが優勢でどちらが劣勢なのかを理解出来ているのだろう。この試合は、あと数分、もって十数分で終わりを迎えてしまうだろう。それくらい、両者の間には大きな差が存在する。
(何だろな~。イケメン君を見てると、誰かとイメージが被るんだよな~。魔法の使い方や戦い方、容姿が似ている人もいない。一体誰とだ?魔力も…………そうか、魔力か)
人が保有する魔力には、生まれながらに持つ波長といったものがある。その波長は人それぞれに違いがあり、全く同じ波長を持っている人同士は非常に稀だ。今の所双子で生まれた子たちくらいしか、全く同じ波長を持っている人同士の存在を、俺やジャック爺は知らない。
そして全く同じでないとしても、非常に近しい波長を持つ事が分かっているのが、父親や母親といった家族、それから兄や姉などの兄弟・姉妹となる。その事から分かる様に、魔力の波長が近しい存在というのは近親者の場合が多いのだ。だが闘技場にいるイケメン君の魔力の波長は、改めて魔力感知してみても…………。俺はジャック爺にそっと近づき、この疑問について小声で聞いてみた。
「ジャック爺。レゼルホルンのイケメン君の魔力波長って…………」
「ああ、そうじゃの。確かに類似しておる。しかし、彼の容姿はあまり似ておらんぞ。もしや、先代か先々代の隠し子?」
「どっちも愛妻家だったし、側室さんたちとも関係は良好だったんでしょ?それはないんじゃない?」
「どちらも、側室の者たち含めて夫婦円満じゃった。ならば一体?……もしや、魔力か魔法によって違う顔や髪色に変えておるのか?」
「その可能性は高いかもね。俺やジャック爺の知らない、王族に伝わる特別な魔法か、特殊な魔道具か何かがあるのかも」
「ふむ、まず間違いないじゃろう。それにしても、何故顔や髪色を変えておるんじゃ?」
「魔法競技大会に出場するための、何かしらの制約か何かじゃないの?普段からあの姿な訳がないだろうし。もしかしたら兄とは違って、手加減や忖度なしの、純粋な実力勝負をしたいからなんじゃない?」
「確かにそれはあり得るの。昔魔法を少し教えた時にも、厳しくしてくれと自分からお願いしてきたくらいじゃからの」
副都レゼルホルンには、王都にいる各公爵家の分家や、
その話は瞬く間に王国中に伝わっていき、辺境であるベイルトンにまで伝わっていた程だ。その後も色々な噂が飛び交い、暫くの間常に話の中心となっていた。当時ジャック爺にもその事を聞いてみたが、どういった経緯で副都に向かったのか分からないと言われた。
そんなレギアス殿下が、何故顔や髪色を変えて出場しているのかは分からない。分からないが、このまま勝ち上がって王都校と戦う事になった時、とても面白い戦いが見れるという事は間違いない。レギアス殿下の動向に、一層注目しておいた方がいいな。
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