第135話
「
「レゼルホルンにあんな凄い子がいたなんて。本当に驚いたわ。誰の
「魔力操作や制御も、私たちより精密だったわね」
「私たちも頑張らないと」
「そうですね」
「頑張りましょう!!」
カノッサ公爵夫妻やイザベラ嬢たちは、レギアス殿下の高い力量に驚いている。学生レベルで考えても、レギアス殿下の実力は頭一つ抜けてるからな。そりゃあ皆驚くだろう。
だが俺とジャック爺は、皆と違って素直に驚く事が出来ずにいる。理由は当然、イケメン君の正体がレギアス殿下だと分かっているからだ。レギアス殿下の実力は本物で、才能に胡坐をかかず、
「お嬢さんたちのやる気が有り余っておるようだし、この後はいつもの様に鍛錬の時間としようかの」
『はい』
「それから、今日見た試合の数々から学んだ事についても、皆で一緒に復習していこうかの」
『分かりました』
本日行われる魔法競技大会の日程は、先程のレゼルホルン魔法学院とニースレイノ魔法学院の試合で終了だ。時間もまだ午後三時頃という事もあり、一旦カノッサ公爵家の屋敷に戻り、イザベラ嬢たちの魔法の鍛錬をしようという事になった。全員でカノッサ公爵家の二台の馬車に乗り込み、のんびりと闘技場からの帰路についた。
カノッサ公爵家の屋敷に到着してからは、イザベラ嬢たちは普段より一層気合を入れて、魔力操作や制御の向上に集中して鍛錬し始めた。鍛錬を始めて一時間から一時間半後くらいに一旦鍛錬を止めて、ジャック爺による、本日行われた試合の細かい解説付きの座学が始まった。
特に集中して解説が行われたのは、やはり遅延魔法についてだった。まず最初に、遅延魔法を使う際のメリット・デメリットを正しく理解してもらうために、遅延魔法を放つまでの流れが説明された。この遅延魔法についての解説には、カノッサ公爵やアンナ公爵夫人も座学に参加し、遅延魔法に関する知識を熱心に聞いていた。
「そして遅延魔法を使う際に気を付けねばならんのは、ウォルターの様な存在じゃ。魔力操作や制御が
「ある事、ですか?」
「そうじゃ。魔法を主体にして戦う純粋な魔法使いにとっては、絶対になくてはならんものじゃな」
ジャック爺にそう言われ、イザベラ嬢たちだけでなく、カノッサ公爵やアンナ公爵夫人も考えていく。そして、皆は数分考えた後に一つの答えが出た様で、一人一人がジャック爺に自分の答えを言っていく。
「ほう、全員一致で杖か。一面においては正しくもあるが、今回の問いに対しては不正解じゃな。この問いにおける正解は、……魔法陣じゃ」
『魔法陣?』
「確かに魔法使いにとって杖はなくてはならんものではあるが、最悪杖がなくとも術式を構築する事は出来るし、展開した魔法陣から魔法を放つ事も出来る。それが難しいのか簡単なのかは、魔法使いの力量によって変わるがの。しかし、魔法を発動するための魔法陣がなくなってしまうと…………」
「魔法そのものを発動する事も出来ない、ですか?」
「その通りじゃ。どうじゃ?魔法を主体にして戦う純粋な魔法使いにとって、それがどれだけ脅威となるかは考えなくても分かるじゃろ?」
『はい』
「まあこれは、遅延魔法のみならず普通の魔法にも言える事じゃがな。ウォルター程の剣士ともなれば、遅延魔法によって展開される魔法陣は、特に脅威にもなり得ぬただの的じゃという事を、各自しっかりと覚えておいてほしいの」
『分かりました』
「それでは、今からウォルターに実演してもらう。言葉だけでは十二分に理解する事は難しいからの。実際に見てもらい、その脅威を知ってもらう。ウォルター、よいな」
「了解」
俺はジャック爺の展開した遅延魔法の魔法陣を、ロングソードで切り裂いていく。暫くそれを見せた後に実戦形式へと切り替え、普通の魔法と遅延魔法を組み合わせた際の攻防も見せていく。イザベラ嬢たちは集中して俺とジャック爺の攻防を観察し、自分たちの成長の為にと学んでいる。
イザベラ嬢たちは、一歩一歩着実に魔法使いとして成長しているな。俺も置いて行かれない様に頑張らないと。
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