第133話

「これで二勝二敗となった。レゼルホルンとニースレイノ、どちらが勝ちあがるのかは、最後の五人目に託されたという訳だな」

「そうね。でもニースレイノの方は上級生の主将で、対するレゼルホルンの方は、今年初出場の新顔の子でしょ?彼の力量は未知数で、どんな戦い方をするのかも分からないけど、それでも主将相手に勝つ事が出来るかしら?」

「もう一人の新顔であった彼女は、レゼルホルンの主将である女子生徒と戦い方が一緒だったが、彼の方はどうなんだろうな?」

「同じく万能型の魔法使いか、何かしらの特化型の魔法使いか、そのどちらかといった所じゃないかしら」

「もしくは、じゃな。万能型の魔法使いでありながら、使う魔法全てが特化型に引けを取らない魔法となる魔法使い。稀に生まれてくる、魔に愛された存在。もしかしたら、彼がそうなのかもしれん」

「魔に愛された存在……。確かにそれならば、ニースレイノ魔法学院の主将にも勝てる可能性がありますね」


 魔に愛された存在、ね。俺やマークとは、対極にいる存在と言ってもいい者たちだな。幼い時から豊富な魔力量に優れ、簡単な属性魔法なら知らぬ間に自然と扱える様になっていたりするという、所謂天才児と呼ばれる者たちだ。

 まあ、恵まれた者には恵まれた者なりの苦労がある。そういった者たちに対して、昔は羨ましいなと思った事はあるが、今は特に何か思う事は無い。寧ろ、昔から天才だの神童しんどうなどと持てはやされたり、家族や周囲の人たちから重圧や重い期待を背負わされてきたと思うと、大変そうだなと少し同情してしまうのが本音だ。


「まあ何にしても、今から始まる試合を見ていれば分かるじゃろう」

「そうですな」


 大盛り上がりの観客をさらに沸かすために、司会と解説もさらに熱を上げていく。そうして紹介された二人の生徒が、観客たちの大きな歓声を浴びながら、闘技場内に堂々とした様子で入場してくる。

 ニースレイノ魔法学院の主将は、理知的な眼鏡の男子生徒。対するレゼルホルン魔法学院の新顔である男子生徒も、大舞台にも関わらず非常に落ち着き払っている、度胸の有るクール系のイケメン男子だ。

 そんなイケメン君を、レゼルホルン魔法学院のもう一人の新顔である女子生徒が、一生懸命に応援しているのが見える。もしかしたら彼女、イケメン君にホの字なのかもな。それとも、マークとソレーヌ嬢と同じ様に、小さい頃からの幼馴染とか?

 イケメン男子、魔法使いとしての才能が豊か、小さい頃からの幼馴染の女性がいる。それから生活環境の良い副都で暮らし、教育環境の良いレゼルホルン魔法学院に入学、そして魔法競技大会に代表として出場する。彼、ギャルゲーの主人公か何かなんじゃない?


(彼が主人公なら、幼馴染らしき彼女以外にも、主将の女子生徒や学院の同級生なんかも、同じ様にホの字になってるのかもな。全く、――――――羨ましいにも程がある!!)

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