第116話
あれから何度もバックパックから出しては仕舞いを繰り返し、女性陣全員分のお土産のお披露目が終わった。色々と疲れた。本当に疲れたがやり切った。疲れ切った俺の肩を、ジャック爺がポンポンと叩いて労わってくれる。
「よくやった、ウォルター」
「うん。無事にやり切ったよ」
疲れ切った俺に対して、女性陣の肌艶は非常に良い。女性陣全員分の大量の服に、大量の小物に食器を見た事で大変満足された様だ。今回のお土産は、帰りに引き渡す事に決まった。それまでは身体も心も休ませることが出来る。
再びお茶会へと戻り、イザベラ嬢たちに、ベイルトンに行っていた間の魔法学院での日常について聞いてみた。先程は公爵家の屋敷での生活の様子は聞いたが、魔法学院で何かあったかを聞いておきたい。何も無ければそれでいいし、何かあったらあったで、それを情報共有しておきたいからな。
「それじゃあ精鋭部隊が王都に帰還してから、アルベルト殿下とその側近たちが、イザベラ嬢やクララ嬢にも突っかかる様になってきたと」
「そうですね。恐らく、ウォルターさんの後ろ盾になっているのが
「それと、私たちがマルグリット様やナタリーさんとずっと一緒にいて、一切近づけない様にしたからね。その分の
「しかし、イザベラ嬢だけでなくクララ嬢まで標的にし始めたんですね」
「まず、イザベラと仲の良いのが一つ。もう一つが、私たちが側近たちの婚約者の方々とも仲良くしているからかしらね」
「側近たちの婚約者?いつの間に接触していたんですか?」
「結構前からですね。それこそ、本格的に動き出し始めた頃辺りからです。最初は色々と警戒されてしまい、接触する事すらも上手くいきませんでした。ですが…………」
「ですが?」
イザベラ嬢たちが俺の事を見てくる。側近たちの婚約者と接触出来なかった事に、何か俺が関係していたのだろうか?そんな不安や申し訳なさが込み上げてくる。その気持ちが顔や雰囲気に出ていたのか、イザベラ嬢たちが慌てた様に続きを口にする。
「ウォルターさん。別にウォルターさんの何かが関係して、婚約者の方々と接触出来なかったわけじゃありませんから」
「え?そうなんですか?」
「寧ろウォルターさんのお蔭で、婚約者の方々の方から接触してくれましたから」
「その婚約者たちとは、どういった関係に落ち着いたんですか?」
「今は協力関係にあります。婚約者の方々も、ナタリーさんに執着の様な想いを見せる側近たちに思う所があった様です。ご両親と相談して、婚約を解消または破棄する方向で進めているそうです」
「その協力関係は、王族やカルフォン公爵側が桃を手に入れた現状でも続いていますか?」
俺の懸念に対して、イザベラ嬢は真剣な表情で頷いて返す。その雰囲気からも伝わってくるが、決して楽観的に状況を見ているという訳でもなさそうだ。
「ええ、間違いなく協力関係のままです。婚約者の方々の家は、魔境に対して正しい認識を持っています。なので王族側が手に入れた桃に関しても、本当に精鋭部隊が入手したのか懐疑的な目で見ていた様です」
「そこに王族主催の帰還パーティーでのあの姿ですから。魔境に正しい認識を持っている方々に対して、明らかに誰かの手柄を奪ったと、自分たちから示した形になりましたからね」
「それに、本当に婚約関係にウンザリしている様子でしたから。少なくとも婚約が解消もしくは破棄となるまでは、協力関係を維持するものだと予想しています」
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