第104話

 王都に帰還してから、数日ほどが経った。俺が王都に戻って来た事を知った精鋭部隊の魔法使いたちは、カノッサ公爵家の屋敷だけでなく、俺の家にまでくる様になった。その都度ジャック爺が代理人の様に相手になり、精鋭部隊の魔法使いたちを追い払ってくれた。

 そして騎士学校にも通学を再開し、ジャンやマークとの再会を喜んだ。色々と根掘り葉掘りと聞かれたが、安易に真実を聞こえるところで言いふらすのもあれなので、人気のない所で再集合して真実を教えてやった。ジャンもマークも、驚きつつもある程度予想していたとの事で、二人ともやっぱりそうだったのかと呟いていた。


「例の王族による帰還パーティには、俺の父や母も招かれていたからな。ある程度の事は聞いていた。だが、ここまでとは思わなかったがな」

「俺はジャンから聞いた内容しか知らなかったが、精鋭部隊の連中の動揺は相当だったみたいでな。社交界じゃ旬な噂になってて、あちこちで皆噂話してるぞ」

「そうみたいだな。それに焦ってるのか何なのか知らんが、カノッサ公爵に面会をお願いしたり、俺の家にまでくる様になったからな」

「大丈夫なのか?」

「今の所は、カノッサ公爵夫妻とジャック爺が追い払ってくれてるよ」

「ジャック爺?誰だ、それ?」

「ああ、ジャンとマークとは顔合わせはまだだったな。ついこの間まで王城勤めをしていた、『賢者』ジャック・デュバルその人だよ」

「「………………はぁ!?」」


 ジャンとマークが、俺の告げた名に驚いて叫ぶ。予想よりも大きな叫び声に、思わず耳を塞ぐ。ジャンとマークはまだ混乱の真っ只中にいて、ジャック爺の為した事を言い合って、あの『賢者』ジャック・デュバルであるのか二人で確認している。


「……ウォルター。お前、賢者様と知り合いだったのか?」

「賢者様と何時知り合ったんだよ?」

「矢継ぎ早に質問するな。……二人の質問に答えると、ジャック爺と俺の仲は王都に来る前、ベイルトン辺境伯領にいた時からのものだ。簡単に言えば、小さい頃に仲良くなった、知り合いのお爺さんって感じだな」

「賢者様が、……知り合いのお爺さん。何とも恵まれてるな」

「何で賢者様がベイルトンに?」

「はぁ……お前らも知らないのか。『賢者』ジャック・デュバルが生まれたのは、ベイルトン辺境伯領だ。つまりベイルトン辺境伯領は、ジャック爺の故郷なんだよ」


 再び告げられた情報に、二人は驚き固まる。しかし、先程よりも衝撃は少なかった様で、暫く経つと我に返った。


「それじゃあ、賢者様はベイルトン辺境伯家の血筋、ウォルターの親戚になるのか?」

「まあ、何親等も前をさかのぼれば、血の繋がりはあるかもしれないな。だが少なくとも、直近の血の繋がりがない事は確かだ」

「どうして親戚でもないのに、賢者様がウォルターと知り合ってるんだ?」

「何でも、先代のベイルトン辺境伯、俺に爺さんと深い親交があったと聞いている。その関係から、王城勤めの時でも時々ベイルトンに里帰りし、その時に挨拶に来ていたそうだ」

「そこで?」

「そうだな。それと俺は覚えてないが、兄貴たちや俺が生まれた時にも、ジャック爺は里帰りしてくれたそうだ。ジャック爺は、爺さんとばあさんのみならず、親父や母さんとも仲が良いからな。その事もあって、兄貴たちや俺を、自分の孫の様に可愛がってくれているという訳だ」


 ジャック爺と俺の出会いの説明に、ジャンもマークもなる程と納得している。そこからは、ジャンとマークによる怒涛の質問攻めにあった。それも、先程の精鋭部隊の真実の時よりも、二倍くらいの熱量と好奇心でだ。

 そして色々と答えていった最後に、自分たちも賢者様に会いたいという素直な気持ちを、隠す事もなく俺にぶつけてきた。まあ俺も、目の前の友人二人をジャック爺に紹介したかったからな。イザベラ嬢たちに帰還の挨拶をするのに合わせて、二人とジャック爺の顔合わせも一緒にしてしまうか。

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