第103話
「それでは、この五日間の王都の動きを教えてください」
「分かった。まずは、精鋭部隊が帰還した所からだな。あ奴らは…………」
突き刺さる三人の呆れた視線を見事やり過ごした後、更なる追撃を防ぐためにも、直ぐに話題を変えて三人に質問する。俺より先に王都へと帰還した精鋭部隊が、どの様な内容で王族たちに報告したのかという事について、一応知っておこうと思い話題にした。
カノッサ公爵夫妻とジャック爺は、振られた話題に対して一瞬顔を
そして、そんな嘘を重ねた精鋭部隊の魔法使いたちに、新たな命令が下ったそうだ。それが、“若返りの桃”を含めた貴重で希少な果物などを、魔境に定期的に潜りに向かい持ち帰ってくるという命令だ。
「だがこの命令に対して、精鋭部隊の者たちが歯切れの悪い返事をしたようでな。その場にいた上位貴族たちが
「それが起きたのが、王族が主催した帰還パーティーの場だったから、余計に疑問視されちゃってるわね。それでも王族とカルフォン公爵側は、事実であるという姿勢を崩さずに、ウォルターさんの事を使えない人物だとして見ているわ」
「疑っている上位貴族たちの中にも、魔境という地が本当は大した事ないと考える者たちと、ウォルターが凄腕なのでは?と考えている者と分かれている」
「前者は論外じゃな。恐らく、自分たちの送り込んだ者たちが全滅したか、壊滅したために情報が届いていないのじゃろうな。後者については、前者と同じ状況ではあるものの、多少の見どころはあるの」
「カノッサ公爵家の派閥の貴族たちには、賢者様の方からも周知徹底させているから、ウォルターさんを甘く見る者はいないわ。そこは安心してちょうだいね」
「あ、はい」
王族やカルフォン公爵が引くに引けなくなってしまっているのが、魔境から桃を持ち帰った事を、大々的に王都の民たちに広めてしまったからだそうだ。俺からしてみれば、精鋭部隊のあの様子からいって、そうなるだろうなとは思っていた。なるべくしてなったとしか言いようがない。
「まあ、こうなる事は予想してましたから、何とも思いませんね。それで、精鋭部隊の者たちから接触はありましたか?」
「毎日毎日飽きもせずに面会を願いだされているが、会う事もせずに断っている。ウォルターとしても、それで良かったのだろう?」
「ええ、構いません。魔境で彼らの命を助けただけでも、十分すぎる程の貸しがあると俺は認識していますから。面会を拒否したくらいで騒がれる程、この貸しは小さくありません」
「つまり、今後も取り合う必要はないという事だな」
「はい、その通りです。寧ろ、向こうが根を上げても無視するくらいでいいんじゃないですかね」
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