誰もシナリオを知らない、乙女ゲームの世界

第53話

　私たち四人で楽しんだ王都での休日から明けて翌週、私たちは勉学に励む一週間へと戻ってきたわ。そんな私たちの元には、続々と仲の良い女子生徒たちが集まってくる。その集まってくる子たちからは、全員私たちの計画に参加する事をやる気を滾らせながら報告されたわ。

「一般の生徒たちには、本当は辞退してもらいたかったのに」

「イザベラ、そう言わないの。彼女たちも分かった上で協力する事を選んだのよ。つまり、それだけ本気だって事よ」

「分かってるわ。でも、やっぱりね」

「その気持ちは私も理解するけどね。だからこそ、彼女たちの覚悟に私たちも応えないといけないわ」

「…………そうね」

　これから先の事を考えると、やっぱり一般の生徒たちには辞退してもらいたかったというのは本心よ。それに、一般の生徒たち全員が計画に協力してくれるのは予想外だった。少なくとも、商人をご両親に持つ子たちのご家庭は断ると予想していたもの。

（危険を冒してまで協力してくれるのだから、彼女たちやそのご実家に累が及びそうになったならば、カノッサ公爵家が責任をもって守るわ）

　そして、昼食の時間がくる前までに、全員から協力するという返事をもらったわ。なので私たち四人は昼食を取りながら、計画の第二段階についての話をしていく。本格的に行動していくとはいえ、第一段階は準備段階であると考えてもいい。つまり、ここから第二段階として行動していくのが、私たちにとって本番であると言えるわ。

「早速今日から行動に移りましょう。上位から中位貴族の子女である子たちを集めて、お茶会をしながら交流と情報交換をしていきましょうか」

「そうね。まずは情報を集めていく事から始めていきましょう」

「情報を集めるとは、何についての情報を集めていくのですか？」

「アルベルト殿下たちについてですか？」

　私はマルグリット様とナタリーさんの質問に対して、ニヤリとした顔をしながら答える。

「まず集める情報、それは次期側近候補たちの婚約者の女性たちについてよ」

「側近候補たちの……」

「…………婚約者の女性ですか？」

　マルグリット様とナタリーさんは、私が示した第一目標にコテンと首を傾げて疑問顔になる。そんな二人の疑問顔はとても可愛らしく、同性であっても胸がキュンとさせられてしまうわね。胸の高鳴りを抑えながら、二人の疑問に答えていく。

「次期側近候補たちである彼らには、当然幼い頃から婚約者の女性がいます。そしてその婚約者の女性たちは、私たちと同年代であり、この魔法学院に通っている事も分かっています。さらに言うと、殿下や自分の婚約者がナタリーさんにお熱を上げている事も、彼女たちはしっかりと把握しています」

「そうなると、彼女たちは私たちの事を嫌っているのでは？」

「そうですよ。そんな人たちに接触したら、殿下たちに情報が漏れてしまう可能性もあるんじゃ……」

　二人は少し不安そうな顔をしながら、情報漏洩の危険性などを私とクララに訴える。私とクララは不安そうな二人を安心させるために、笑顔を浮かべて答える。

「接触するにあたって、その辺についてはしっかりと調査済みだから大丈夫よ」

「調査の結果分かったのは、婚約者の女性たちはマルグリット様とナタリーさんに対して負の感情を抱いてはいなくて、寧ろ婚約者である側近候補たちに負の感情を抱いていたわ」

「それって……」

「つまり、私たちの味方になってくれる可能性もあるって事ですか？」

「その可能性もあるわ。でも絶対じゃない。だから彼女たちの情報をもっと集めつつ、その辺りの事を見極めながら、彼女たちをこちら側に引き込めるなら引き込みたいと考えているわ。それが、私たちの最初の目標になるわ」