　ブリュノさんのお店の美味しい料理に舌鼓（したつづみ）を打ちながら、楽しくワイワイと騒がし盛り上がりつつ、俳優さんや女優さんたち、それに裏方さんたちもと会話をしていく。

　劇場や劇団に所属している人たちは、皆社交性が非常に高く、様々な分野に精通している博識な方々ばかり。そして、そんな皆さんの大半が、魔法学院出身の卒業生の先輩なのよ。だからこの場は、先輩後輩の交流の場でもあるのよね。

　そして先輩たちにも先輩たちの魔法学院に関する情報網があって、それによって知り得た情報に関して、現役の魔法学院生である私たちに色々と聞いてきたわ。その中で一番興味を持たれていたのは、やはりアルベルト殿下たちアホ男共の話題についてだった。

「という事は、耳にした例の噂は本当なのね」

「はぁ、いくら王族とはいえ、同じ男として情けないな」

「ナタリーちゃんも殿下の事が好きで、お互いに両想いなら、好きな人を守ってあげたいって気持ちは理解するわ。だけどその当事者であるナタリーちゃんにとっては迷惑みたいだし、マルグリット様にも迷惑かけまくっているから論外ね。殿下は今、恋に恋してるって状態みたいね」

「だが、イザベラお嬢様が味方なら安心だ」

「そうね。こんなに頼りがいのある子が一緒に戦ってくれるなら、どんな相手でも強気でいけるわよ」

　皆もアホ男共の情報を収集していて、色々と危惧していた様ね。先輩たちは短い時間の交流ではあるけど、クララたちが良い子であることを理解してくれたわ。それから、マルグリット様とナタリーさんが当事者であると分かると、勇気づけるために沢山話しかけてくれてた。

「イザベラお嬢様がいるから安心ではあるが、何か困った事があったら、俺たちにも頼ってくれよ」

「私たちこの劇団で長く働いてるから、見に来てくれるお客さんとも長い付き合いや交流があるのよ」

「貴族たちは勿論の事、商人さんや職人さんたちにも伝手があるからね。何かあった時には力になってあげられるわ」

「身を隠す事になった時にも、私たちが協力してあげるからね。遠慮せずに頼ってきなさい」

「「はい、ありがとうございます」」

　マルグリット様とナタリーさんが、揃って一礼して感謝を告げる。そんな二人の肩を、近くにいる先輩たちがポンポンと優しく叩いてくれる。これで、先輩たちをこちら側に引き込む事が出来たわ。

　前世でもそうであったけれど、乙女ゲームだろうとファンタジー世界だろうと、学校を卒業したOBたちの影響力と言うのは非常に大きいのよ。

　この場にいる先輩たちは、王国最高峰であるこの劇団に所属している事からも分かる通り、非常に優秀な方たちばかり。そして何より、先輩たちも貴族の家の生まれなのよ。

　私の事をもの凄く持ち上げて評価してくれていたけど、私からして見れば、先輩たちの方がもの凄く頼りになる。だからこそ、外部の協力者として先輩たちの協力を真っ先に取り付けておきたかったの。そんな先輩たちがクララたちの事を気に入ってくれた事や、何かあった時には協力すると明言をしてくれた事に、私は一人静かに心の内で安堵した。