第51話

 ダミアンから溢れ出た絶対的な自信から感じた、私の確信は正しかったわ。前回公演を見にきた時よりも、俳優さん女優さんたち全員の演技の質が上がり、表現の幅も大きく広がっていた。そんな彼らが役になりきって演技する事で、劇場内にいるお客さんたちの視線を釘付けにして、全員の心を劇へと引き込んで離さなかったわ。


(流石は、長年王都の第一線で活躍してきた役者たちだわ。それに、オーナーであるダミアンの人望も影響しているのでしょうね。皆が長くこの劇場や劇団で働きたいと思えるように、オーナーでありながら先頭に立って色々とやってきたものね)


 それから、役者を支える裏方の人々の動きも素晴らしかったわね。照明の魔道具での暗転のタイミングや、役者たちの衣装から小道具、さらには演出など全てが高レベルのものだったわ。全員の心を劇に引き込んで離さなかったのは、こういった裏方で支える人々の力もあってこそね。

 私たちは興奮冷めやらぬ状態のままに、ダミアンの部屋へと足を進めているわ。私たち四人とセバスで、あの場面が良かった、あそこの演出は凄かったと、先程までの素晴らしき公演の感想を語り合う。

 セバスは、お爺様が現役の頃からカノッサ公爵家に仕えているだけあり、演劇に関しての知識や見識が非常に高い。色々な豆知識と共に、演出や表現についての細かい補足をしてくれる。それらを聞きながら演劇を振り返ると、また違った発見が色々とあって、ダミアンの部屋と到着するまで話が途切れる事なく続いたわね。


「ダミアン殿、セバスです」

「おっ、来たか!!入ってくれ!!」


 私たちはダミアンの許可を得たので、部屋の扉を開けて中へと入る。ダミアンは椅子に座りながら、自分の机の上にある書類に目を通しつつ、一つ一つの書類へとサインを記入している。


「申し訳ないのですが、この一枚が終わるまでお待ちいただけますか?」

「ええ、大丈夫よ」

「ありがとうございます」


 ダミアンは手際よく書類の中身を確認し、さらにその書類に関連した別の書類を確認して、二枚の書類にサインを記入してから羽ペンをペンスタンドへと戻す。


「お待たせして申し訳ありません」

「さっきも言ったけど、全然構わないわよ。ダミアンは自分の仕事をしているだけのなのだから、そこまで気にしなくていいわよ」

「そう言っていただけて助かります。……それでは、ご友人方を私にご紹介いただけますか」

「そうね。それじゃあ、…………」


 私はダミアンに、大切な親友たちの事を紹介していく。最初にクララを紹介した時には少し驚いた程度の表情だったダミアンだけど、ナタリーさん・マルグリット様と続けて紹介していく事に、心底驚いたといった表情にまで変わっていたわ。

 そして全員の紹介が終わった所で、本題である打ち上げの料理についての話をしていく。ダミアンはブリュノさんのお店の事を昔からご存じの様で、私たちの差し入れの料理がブリュノさんの所の料理だと知って、もの凄く喜んでいるわ。

 私たちはダミアンの先導の元、劇場・劇団に所属する人たちの待つ食堂へと向かう。そして到着早々、私たちの差し入れを期待して待っていた皆さんの前へと、セバスの持つマジックバックから次々と料理を取り出していき、手際よく準備を済ませていく。


「皆、今日も一日ご苦労様!!今日の打ち上げは、イザベラお嬢様からの差し入れの料理で楽しもう。何とこの料理、あのブリュノの所の料理だそうだ」


 ダミアンがもたらした情報に、皆が喜びの声を上げていく。皆ブリュノさんの料理の美味しさを知っている様で、待ちきれないとばかりに料理をジッと見つめている。


「皆待ちきれないようだから、これ以上の言葉はいらんな。さあ、美味しい料理をお腹一杯食べようか!!」

『オォォォォ!!』

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