第45話
カトリーヌさんは、私が伝えたウォルターさんの情報を参考にして、幾つかの戦闘用魔道具を選んでくれたわ。
使用制限ありだけれど、魔力を流すだけで結界を生み出す魔道具。同じく魔力を流し込んで敵や地面などに投げつける事で、眩しい光や煙を発生させる魔道具。剣の柄の形をした魔道具で、この柄に魔力を流し込むと魔力の刃が形成されるという、武器型の戦闘用魔道具。
戦闘用魔道具に関しては、ウォルターさんの持つ武器が壊れた際に使うもので、普段使いしない様にと注意を受けたわ。カトリーヌさんが言うには、使い方や威力を把握するために何度か使っていくのはいいが、この戦闘用魔道具を普段使いして慣れてしまうと、逆に普通の武器が使えなくなってしまうとの事。
カトリーナさんは、その様にして魔道具に慣れてしまった事で、戦士や剣士たちがどの様に命を落としたのかを教えてくれたわ。その話のどれもこれも悲惨な死に様であり、どれだけ強力な魔道具であったとしても、決して壊れないと思ってはいけないという教訓になる話だったわ。
「この教訓は魔道具だけに関わらず、普通の武器や魔法使いの杖に置き換えても同じ事なのよ。この事をよく知っている戦士や剣士たちは、毎日長い時間をかけて自分の武器を点検したり手入れしたりするの。何故なら、扱う武器こそが自分の命を守ってくれるものだと知っているからよ」
「なる程。そして、魔法使いも同じだと」
「そうね。確かに魔法使いにとって戦闘服に杖、それから魔力があれば戦う事が出来るわ。でも杖も壊れる事もあるし、戦闘服だって修復困難な状態まで傷つけられればその効果を失うわ」
「その事を頭に入れず、点検も手入れもしなかった先に待つのが…………」
「悲惨な死、だけだわ」
色々と為になる話を聞いて、私は自分の意識の甘さを認識したわ。これはウォルターさんの事を言っているのと同時に、私に対しても同じ意味を込めて伝えてくれているんだわ。確かに何処か無意識の内に、杖は壊れない、戦闘服も壊れないという思いがあった。だから戦闘服や杖の点検も手入れもした事がない。このままカトリーヌさんに出会う事がなければ、この先の未来の何時かに、私に悲惨な死が突然訪れていた可能性もあったという事に恐怖を覚える。
「今回イザベラが知った事を、お友達やその彼に教えてあげればいいのよ。その意識が広く広まってくれれば、一冒険者としても、一魔道具師としても嬉しい限りだわ」
「分かりました。私の方からも、お父様たちや学院の友達に広めていきます」
「ええ、お願いね。…………それにしても、イザベラの彼の事を聞けば聞く程、私の知り合いにそっくりなのよね」
「え?そうなんですか?」
「そうなのよ。ウォルター君って名前の男の子でね。何とベイルトン辺境伯家の三男坊なんですって。イザベラの彼と同じで、今は騎士学院に通ってる子よ」
「カ、カトリーヌさんのお知り合いっていうのは、ウォルターさんなのですか!?」
「もしかしてイザベラの彼って、ウォルター君のことなの!?」
何という偶然なのか、カトリーヌさんとウォルターさんは知り合いだったみたい。それにしても、ナターシャの親族であり、この店の従業員にして冒険者であるカトリーヌさんと顔見知りなんて、ウォルターさんは顔が広いのね。
(ふふふっ、これは次に会う時に色々と問い詰めた方がいいわね。クララと協力して、洗いざらい吐かせてしまいましょう)
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