第40話

 女子四人でワイワイ楽しく服を選び合いながら、これも良いあれも良いと皆で目移りしてしまう。この老舗の服屋は、服だけでなく下着やアクセサリーなどの小物類なども取り扱っているから、色々な物に目移りしてしまうのは仕方のない魅惑の空間なのよ。それに色々な物があるからこそ、マルグリット様とナタリーさんがどういったものを好むのかや、どういう風に自分を見ているのかがよく分かる。

 マルグリット様は自然とエレガントなコーディネートを選んで、アクセサリーなどの小物類に関しても、コーディネートに合う物を手に取っているわ。そして下着に関してなのだけど、こちらも自然と大人の色気が漂うエロスなものを選んでいたわ。

 対するナタリーさんはといえば、マルグリット様とは対照的に可愛い系のコーディネートを選んで、アクセサリーなどの小物類や下着に関しても、同じく可愛い系のものを色々と手に取っていたわ。


(ナタリーさんの方は、自分の魅力や魅せ方が分かってる感じね。それにコーディネートやアクセサリー、下着などを選ぶポイントが値段が安いという点かしら。それでも数ある商品の中から的確に良いものを選んでいるというのは、店員さんたちの反応を見るに一目瞭然ね)


 店員さんたちのナタリーさんを見る目が、入店時の微笑ましく見守るものから、良いセンスをしているお客さんであるという目に変わっている。しかし店員さんたちのその目にあるのは負の感情ではなく、どちらかというと、ナタリーさんの良いセンスから少しでも学ぼうという思いを感じるわ。


(マルグリット様の方は、長年のご実家での暮らしなどが影響しているのか、自分の魅力や魅せ方がよく分かっていないわね。それでも、自分の容姿やプロポーションを最大限に魅せる事が出来るコーディネートなどを、自然と選んで手に取っているわ。マルグリット様も良いセンスをしているわね)


 ナタリーさんだけでなく、マルグリット様も良いセンスをしている事に、勿論店員さんも気づいているわ。だけど、マルグリット様が自然と選んで手に取った商品の殆どが高級品である事に、ほんの少し残念そうにしているのが分かる。

 この店はどちらかというと、一般の人々に向けた商品に力を入れているから、その気持ちは分からなくもないのよね。でも今日は許してあげてほしい。マルグリット様は今日が初めてのお出掛けだし、自分で服を選ぶのも初めてなのだから。

 私は二人の事をクララに任せて、それらの事情をそれとなくこの店の店員たちやオーナに告げて、二人についてサポートをしてもらう事をお願いする。この店の店員たちやオーナーは、長年貴族相手に商売をしている事もあって、情報漏洩など信用問題に関わる事は絶対にしないのよ。もしそんな事をしてしまえば、貴族たちのみならず、一般のお客さんからの信用もなくなってしまう。その事をよく分かっているから、この店は老舗と呼ばれるまで生き残っているの。

 私のお願いに、オーナーとその愛弟子のお一人が動いてくれたわ。二人共親身になって色々と話を聞きながら、マルグリット様とナタリーさんに合うものを選んでいくわ。それらは二人の魅力を十分に引き立たせるものであり、流石は一流のプロであると心からの称賛を送ったわ。マルグリット様もナタリーさんも、一流のプロに選んでもらったコーディネートなどを気に入って、嬉しそうに笑顔を浮かべてくれたわ。その笑顔を見れただけでも、この店での買い物は、私もクララも大満足の結果となったわ。

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