「おはようございます、イザベル様、クララさん」

「おはようございます」

「「おはようございます」」

　私たち四人は、それぞれ一礼をしながら朝の挨拶を交わす。マルグリット様はまだ少し硬いけれど、私たちと挨拶をする際に笑顔を浮かべてくれたわ。ナタリーさんの方もまだまだ緊張が残っているけれど、柔らかい笑顔を浮かべてくれている。

　二人とも私とクララと一緒に行動する様になってから、肉体的にも精神的にも気を張らなくてよくなって、毎日の様に感じていた疲れもなくなったと教えてくれたわ。そのお蔭もあって、マルグリット様もナタリーさんも一日一日が過ぎていく事に、身体から余分な力が抜けて柔らかい笑顔が増えていったわ。そして、二人の雰囲気の変化や柔らかい笑顔を浮かべる事に周囲の人たちも気づき始め、徐々に二人に対する印象が良い方向に変わりつつあるわ。

　それに比例して、殿下や側近たち色ボケ男共の印象も変化し始めているわ。嫌がらせをしているマルグリット様を諫（いさ）め、嫌がらせを受けていたナタリーさんを気遣い、身分の差を気にする事なく親身になって助ける素晴らしい殿下たち。そんな事を学院では言われていたのに、今では少し懐疑的に見られているわ。

　それと言うのも、あの食堂での私の言動が少なからず影響しているらしいのよ。私がまずが確たる証拠を出せと反論した時に、殿下たちやローラが証拠を出す事なく口だけでマルグリット様を責め立てた事から、証拠もなしにマルグリット様を犯人にしたがっているのでは？と、色々と懐疑的に思う生徒たちがチラホラと現れだしたのよ。その結果、徐々にではあるけれど、殿下や側近たちを支持する人が減ってきているそうよ。

「今日のお出掛けが楽しみ過ぎて、昨日は中々寝付ける事が出来ませんでした」

「マルグリット様もですか。実は私もそうでした。学院に入学するために王都に来ましたけど、勉強に付いていこうと必死でしたから、遊びに出掛ける事はなかったんですよ。だからもう、今日という日が楽しみで楽しみで、中々寝られませんでした」

「やっぱりそうですよね。私も、友達と一緒に遊びに出掛けるという事が、こんなにも楽しいものだとは思いもしませんでした」

　マルグリット様の思わず漏れ出た想いに、私とクララの涙腺が刺激されてしまったわ。さらに、ナタリーさんも同じ気持ちであると伝えられてしまうと、遂に私たちの目元にキラリと光る水が溢れてきてしまう。それをマルグリット様とナタリーさんに見られない様に、サッと目元を拭って光る水を消し去る。そして、私とクララはニッコリとした笑顔を浮かべながら、今日一日のスケジュールを二人に説明していったわ。