第36話
仲の良い子たちに協力をお願いした日から数日が経ち、今日は一週間の最終日である週末。私たちの動きは順調で、自分たちを慕ってくれているであろう子たちの九割には計画の話を終えて、今日で残りの一割である子たちに協力をお願いすれば、第一段階は終了するわ。
今目の前に集まってくれた子たちは、全員庶民や平民と呼ばれる子たちだ。勿論、この子たち以外にも仲の良い一般の子たちはいるし、その子たちも既に協力はお願い済みだ。そして貴族の子たちとは違って、断ったとしても何も問題がない事を何度も念押ししてからの説明となった。
現在魔法学院に通う一般の子たちは、貴族の子たちからは平民平民と言われているが、本当の意味での平民の子はいないと言ってもいいのよね。確かに身分的には平民の子である事は間違いないのだけれど、豪商の息子や娘だったり、代々貴族の従者をしている一族の息子や娘であったりと、社会的地位の高い者たちの子が多いのよ。
平民の入学が認められた当時や数十年の間は、本当の意味での平民も入学できていたの。だけど、魔法使い至上主義者たちが色々と工作をした事で、後ろ盾のない一般の子たちの入学が非常に難しくなってしまったわ。
この学院が設立された当時は、近隣の国と対立していた時期でもあったと、この国の歴史書や学院の歴史書に書かれていたわ。そして学院が設立された理由も、それに関係してくるの。周辺の国々との戦争に負けない様に、強い魔法使いを生み出すためにと、この学院は設立されたわ。そして、裏切りの可能性が低いと考えられた貴族たちの子息や子女たちに、魔法学院へ入学する権利が与えられたわ。
(だから魔法使い至上主義の連中は、その設立に至った理由など古い歴史を持ち出して、後ろ盾のない一般の子たちの入学への道を厳しくしたわ。その子たちの中に、
悔しいけれど、彼らの言い分にも一理はある。確かに密偵としては、一般の人々に紛れ込むのが一番動きやすいでしょうね。そして、他国の国家機関である魔法学院に後ろ盾もなく平民の身分で入学出来るとなれば、潜り込んでくるのは間違いないわ。
それは認めるけれども、後ろ盾のない子を誰も彼も疑って、絶対に入学させない様にするのは違うと私は思っているわ。その子たちの中には、得難い才能や稀有な才能を持つ子もいる可能性はあるし、学院を卒業したその子たちが魔法と言う分野を発展させたり、国に貢献する可能性もあるわ。
そして何より、その子たちがまた新たな才能の原石を見つけて育てていき、少しずつ一般の人たちにも魔法が広がっていけば、この国は少しづつ変わっていけるかもしれないわ。そんなあり得るかもしれない未来のためにも、今回の協力によって、学院内の平民のイメージを下げる事は出来れば避けたいわ。
だけど、目の前にいる平民の子たちや前日に協力をお願いした平民の子たちは、私のそんな思いなど知る由もなく、瞳をキラキラさせながら私たちの話に聞き入っていたわ。
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