第10話
俺についての何かが決まったあの後、女性陣三人は楽しい女子会へと移っていった。内容は多岐に亘り、美容や流行についての話題から始まり、国政についての話題、貴族たちの間に流れる噂話などについてなど、様々な事を話している。
アンナ公爵夫人は、メイドさんに追加で用意してもらった紅茶やお菓子を口に入れながら、イザベラ嬢とクララ嬢に、面白おかしく話をふっている。自身の存在を薄くし、静かに女性陣の会話を聞いていた俺だが、その中で出て来た話題の一つに、もの凄く興味を惹かれた。
「イザベラ、最近アルベルト殿下のよからぬ噂を耳にするのだけれど、学院は大丈夫なの?」
アンナ公爵夫人が、心配そうな顔をしながら質問をする。そしてその質問に対して、イザベラ嬢のみならず、クララ嬢までもがうんざりした様な雰囲気になった。二人にとって、アンナ公爵夫人がした質問は、あまり積極的に触れたくはない話題の様だ。
「二人ともどうしちゃったのよ?急に不機嫌になっちゃって」
「お母様が聞きたいよからぬ噂についてっていうのは、アルベルト殿下が婚約者であるマルグリット様の事を放置して、ナタリー男爵令嬢に入れ込んでるって話でしょう?」
「ええ、そうよ。……貴女たちの、その語るのも嫌そうな顔を見れば、その話はある程度事実なのね?」
「アンナ様、ある程度どころか、ほぼ事実です。しかも、アルベルト殿下がナタリー男爵令嬢に入れ込み始めてから、マルグリット様との関係が急速に悪化し始めました。今ではもう、ナタリー男爵令嬢と結ばれる事を、マルグリット様が邪魔していると思っているくらいです」
「実際はどうなの?」
「マルグリット様は、アルベルト殿下の事を人間としては好意的に見ている様ですが、男性としては全くといい程興味を示していません。完全に、政略結婚であると割り切っていますね。むしろ、マルグリット様の一つ下の妹様である、ローラ……様の方が、アルベルト殿下の事を男性として意識しています」
「……なんで、マルグリットと同じ環境で育って、あんな風になっちゃうのかしらね?」
アンナ公爵夫人が、心底分からないといった様子で呟く。イザベラ嬢もクララ嬢も、アンナ公爵夫人と同じ様に、全く理解できないといった様子だ。
だが生前オタクだった俺は、三人とは全く違う事を考えていた。アルベルト殿下といえば、この国の第一王子、つまりは次期国王となる王太子である。そして、今の三人の話を聞いていて、生前色々と読んだ小説の中の一つのジャンルや、それにまつわる単語が、頭の中に浮かんでくる。
乙女ゲーム・悪役令嬢・婚約破棄などといった‟タグ”が、一気に頭の中を駆け巡っていく。点と点が繋がり、幾つもの線が出来上がり、もしかしてという思いがどんどん大きなっていく。
(もしかしてこの世界、ただのファンタジー世界じゃなくて、乙女ゲームの世界なのか?)
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