第2話 うでなめ。

「なめ、たい?」私が聞き返すと、ころはこくりとうなずいた。


 舐めたい……? ナニを……? ぽやんとした頭で考える。……あ、アイスのことか。私のいちごアイスを舐めたいのか。


 ちゅぽ。咥えているアイスを抜き、ころの口元に差し出す。間接キス……だけどまあいいか。そんなことを気にする仲でもない。


 ころは少し目を丸くして、驚いた様子だった。あれ、違った? でもペ、と舌をだした。彼女の舌は長い……頑張れば自分の鼻先に届くほどに。

 

 私はアイスの持ち手を動かし、舌の上でころころと転がしてあげる。


「ふぁまーい」といいながらころはアイスを堪能していた。その様子が結構可愛くって、ついでに私は彼女の頭をなでなでしてしまう。


 ぽた。アイスが溶け、床に垂れてしまう。


 「あ、やべ」私は慌ててアイスを自分の口にちゅぽ、と戻す。さっきよりいささか甘い気がする。


 ちょうどアイスを食べ終わった時、ぴと、と私の肩にころのほっぺがひっつく。甘えたいのかな?


 ……でも今日はあんまり甘えてほしくないなぁ、なんて思う。私は汗をかなりかいてしまう方だ……こんな暑い日ならなおさら。だからベタベタとくっついたりして彼女を自分の汗で汚してしまうのが申し訳無い。


 私はころと向き合って、ぷに、とほっぺをつまむ。ぷにぷにぷに。感触が心地よくて、ついたくさんつまんでしまう。


「にゃー」つままれながら彼女は猫みたいな鳴き声をあげる。


「なめたいー」とまたころは繰り返す。


「あれ、アイスじゃなかったん?」


「アイスもなめたかったけど……」といいながらじーと見つめてくる。


「じゃ何をなめたいのさ」


「あせ」


「あせ?」


「うん、あせ」


「あせ……? たくさんかいてる、このあせ?」私はとまどいながら腕を見せる。汗は光を放ち、てらてらと反射している。


「うん。君の肌みてると、チョコみたいだなって」


 たしかに今の私の肌は日焼けしていて褐色だ。部活が陸上競技だから、夏場はどうしても日焼けしてしまう。

 

「チョコって……舐めてもしょっぱいだけだよ、甘くなんてないよ」


「甘いもの食べすぎたからちょうどいいかも」


「そう? じゃあお好きに」と私は答え、腕を差し出す。


 れろ。ころは舌の先っちょを私の腕につける。


「どう?」って私が聞くのも変な話だけど。


「しょっぱい……」


「だろうね」


「けどね、甘くもある」


「んなバカな」本当に甘かったらそれはやばい。


「気持ち甘い……甘い気持ちになる」そういうころの目は少し、とろんとしていた。


「あー、そういう甘いね……」少しスイッチ入っちゃってるなぁ、と私は思う。彼女は発情、というとえっちすぎるか……いちゃつきモードになりやすいとこがある。二人きりになると特に。



 ぺろぺろ、ぺろ。彼女はその長い舌で私の腕をたくさん舐めはじめた。くすぐったい……けれどこの感触、新鮮で、なんか心地よい。


 ころの表情を見ると、幸せそーに目を閉じてぺろぺろしている。


「ふう」満足したのか彼女は口を離す。


「そんなにおいしい?」私もぺろりと、自分の腕を舐めてみる。「あれ、しょっぱくもないな……なんかねとねとしてるし」


「だってそこ、私が舐めたとこだよ」ところは首をかしげる。


「あっそっか……どうりでしょっぱくない」


「あまい?」


「そう聞かれると、甘いかも」ころの唾液を舐めたと思うと甘く感じてきた。


「ふふ、それなら良かった」ころは可愛く微笑む。

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