第11話新入生交流会(7)
まだ痛いのか右手で股間をおさえながら、ゆっくりと立ち上がり、空いた片方の左手で体についた埃をパシパシと払う。
付着した埃を全て払い除けるのと同時にマイク越しに体育館に集まった新入生の耳に届く程の声が聞こえてくる。
その声のする方向へと皆が視線を移すと、壇上の上には身長170センチ程度の大柄な女性が仁王立ちしていた。
自己主張激しい大きな胸を所持し、線の細いスタイルをしたリクルートスーツ姿。
目はキリッとしていて、可愛い系とは正反対の美人系の顔立ちをしている大人の女性。
年齢的には30代だろうと予想される印象だろう。
「よく集まってくれた新入生諸君!私はこの学園の長、つまり学園長の神美瞳と言う。学園を代表して皆の入学を歓迎するよ!」
威厳すらある風格を漂わせ、しかしながら神秘的な魅力も感じ、ゴクリと生唾を嚥下する。
そう感じたのは池明太だけではなく、周りにいる…いや、新入生全員がそう感じているのを肌で感じた。
一瞬の間を置き、更に学園長の神美瞳は言葉をマイク越しに言葉を発する。
「入学そうそう、この場に集まってもらったのには理由がある。恐らく知っている者も何人かはいるかもしれんが、今一度私の口から説明させてもらおう」
学園長の言葉に
『知ってる』
『え?私知らないよ』
などの声がざわざわと漏れ聞こえてくる。
「まず、この場に集まってもらった主な理由…。それは、新入生同士の交流の場を提供する為だ。まだ今日が入学初日。同学年どころかクラスメイトとの交流すら満足に出来てはいないだろう。これから同じ学園で3年間を共にするのだからより1人でも多くの友人を作るべきだろう。それに…」
一気に捲し立てながら説明をする学園。
しかし、最後の部分だけは不敵な笑みを浮かべていた。
「今年から新たに新校則を追加決定された!」
学園長の後方からババンッと文字が浮かび上がりそうな勢いで力強く声が体育館中に響き渡る。
「…新校則?」
学園長の勢いで静まり返った体育館に池明太の疑問の声が漏れ聞こえる。
その声にニカッと笑みを浮かべ反応した学園長はその疑問の声に素早く答える。
「ああ!新校則だ!皆、入学前に送らせてもらった生徒手帳は持っているか?その1番最後のページを開いて欲しい」
学園長の言葉に皆がポケットを漁り、一斉に生徒手帳を取り出す仕草をしだす。
しかし、上白糖と渉だけは違った。
「わりぃ。持ってきてないわ」
「俺も家の何処かにあるな」
「……せめて入学式当日ぐらい持って来いよ…」
呆れながら2人を見つめた。
池明太は、仕方ないと溜息を吐きながら2人に見えるように生徒手帳を広げる。
「最後のページって言ってたよな?えぇーっと…」
パラパラと生徒手帳が最後のページへと向かって捲れていくと数秒後に目的のページへと辿り着く。
「……ん?」
何かに気付く池明太。
「どうした明太?」
「池明だ!何度言えば分かるんだ!!」
「あー、はいはい。面倒臭いやつだな。んで、何かあったのか?」
素っ気なくあしらう上白糖は池明太の疑問を問いただす。
「いや、これさ、どう見てもエロ本で良くある袋とじだよな?」
「例えが正常な男子学生らしくていいが、確かに袋とじになってるな」
「ああ、過去に神経を尖らせ、慎重に丁寧に切り取りしていた袋とじと同じで間違い無いな」
「……これだから男子は…」
美春は、3人のやり取りをゴミを見るような目を向けながら今日何度目になるかの溜息を吐く。
「ふむ。何人かは気付いたようだな。では、その夢溢れる袋とじを慎重に開封してくれ」
学園長の一言で皆が袋とじ部分に慎重に手をかけ、ゆっくりと切り取りしていく。
ぴりぴり、びりびりと紙が破れる音があちこちから聞こえて来る。
池明太もそれに続くように慎重に切り取り始め、今までの経験を発揮したかのような見事な切り口で、無事開封を終えた。
開かれた未知のページには誰もが驚愕する新校則が綴られていた。
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