第7話新入生交流会(3)
明太は地べたからゆっくりと立ち上がり、姿勢を正すと、上白糖と小林渉に美春を改めて紹介する。
「こいつは藍沢美春。さっきも言ったが幼馴染だ」
「俺は上白糖です。砂糖のように甘い笑顔に定評があります!宜しく!!」
にかっと白い歯を輝かせながらブサイクな笑顔を見せつける。
向けられた側はたまったものではないだろう。
「あ、てめ!俺が先に自己紹介する筈だったのに!!あ、俺は小林渉!近所のおばあちゃん達からかっこいいと定評があります!宜しく!」
張り合う様に渉も自己アピールを口にする。
とても自己アピールになっているかは微妙なラインではあるが。
「え、えっと、宜しく…ね」
美春は、二人を交互に見ながら苦笑いを浮かべる。
「…はぁ……お前なぁ……」
池明太も美春に習う様に呆れ顔を浮かべた。
自己紹介もつつがなく終わり、池明太、美春、上白糖、渉の四人は並んで体育館へと向かい始める。
校舎から少し離れた場所に位置する鉄筋で組み上げられた立派な建物が視界に入る。
壁は白色で統一されており、清潔感がある印象を伺わせる。
外見から見て一般的な形をしている為、それが体育館だと容易に認識出来た。
その体育館の入り口には何人もの新入生と思われる男子生徒と女子生徒が列を作っていて、賑やかな話し声が池明太達の耳にも聞こえて来る。
その列に池明太達も習う様に並び、時間が経過すると共にゆっくりと体育館の入り口へと導かれていく。
列に並んで数分後、ようやく池明太達は体育館内部へと辿り着く。
「…おおっ!さっきの行列で予想してたが、凄い人数だな」
目の当たりにする新入生に数に圧倒される渉。
「ああ!それに、すんごい可愛い女の子が大勢いるじゃないか!ふふふ。きたきたきたーー!!」
興奮が抑えられない様子の上白糖の顔はだらしなくニヤけていた。
すると、突然上白糖は顔を引き締め、動き出す。
ゆっくりとしなやかに一歩、また一歩と足を進める。
その先には恐らく美人クラスであろう女子生徒。
上白糖は躊躇わない。ただ、唯一の夢を叶える為に行動するだけの存在だった。
その夢とは…
「…彼女を作る。俺はその為だけに生きてきたんだ…。俺は…行くぜ…」
顔はあれだが声だけは無駄にイケボだった。
しかし、渉は慌てて上白糖の前に立ち塞がる。
「ま、まて!!正気か!?悪い事は言わない。だから今は…今だけはやめておけ!」
「…わかる…。わかるよ…渉。だが、これも俺の選んだ人生だ。例え何度、俺の前に立ち塞がろうとも、必ず同じ道を選ぶ。だから、そこをどくんだ」
上白糖は止まらない。
立ち塞がる渉の肩に手を置き、自分が進むべき道を切り開く。
そして上白糖は目指すべき夢の場所の前へと辿り着く。
「俺の女にしてやるよ。可愛い天使ちゃ…ぐぎゃゃぁぁぁぁぁーーーッ!!!」
「お前みたいなブサイクが彼女に近づくな!!!」
一瞬だった。
刹那の出来事だった。
物凄い勢いで少女漫画に出てくる様な容姿をしたイケメンクラスの男子生徒が上白糖の首を狙ってエルボーを叩き込んだ。
あまりの衝撃に上白糖は何が起きたのか理解する前に意識を手放した。
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