第2話ブサイク教室へようこそ
長い廊下を歩いていく池明太と藍沢美春。
休み時間だと廊下で談笑している生徒達もいるが、今は始業前の予鈴が鳴ったばかりだからだろうか、誰1人廊下に生徒達の姿は無い。
静かな廊下には2人の足音が響き渡るのみ。
そんな静寂に包まれた廊下を歩いていくと、美人、イケメンクラスと書かれたプレートが視界に入った。
「じゃあ、私の教室はここだから。あんたも、遅れずに教室に行くのよ?」
美春の所属するクラスのドアの前で足を止め、人差し指を池明太に向けて注意する。
「………あ、俺もここのクラスじゃないか。奇遇だね?これから1年間宜しくな、美春。」
笑顔でそう挨拶をしながらドアに手をかける池明太。
しかし、それは美春によって妨害されてしまう。
「アホな事言ってないで、早くあんたのクラスに行きなさいって言ってるでしょ?その紙に書かれたクラスに。」
「…………………やだ…」
「……気持ちは分からなくはないけど、登校初日に遅刻は良くないんだから、諦めなさい。」
「………ちくしょう……」
頬に一筋の涙が流れた。
苦渋の決断をしながら、池明太は肩を落としながらふらふらとその場を後にするしかなかった。
美春と別れてから少しして、ようやく池明太の所属するクラスに到着する。
ドアの上方には、その教室名の書かれたプレートが立てかけられている。
『ブサイク教室』
そう名を打たれたプレートが存在感を放っている。
「……………流石に泣くよ…?」
あまりにもド直球すぎるクラス名に池明太も心が折れそうになる。
しかし、これが現実なのは認めるしかない。
認めたくないけど。
「………………」
無言で教室のドアに手をかけ、右から左へとドアをスライドさせる。
これからこの不名誉なクラスで高校生活を迎えなければならないのかと悲しくもあり、憎くもあり、後悔もありと色んな感情が溢れてくる。
だが、何を言っても無意味なのだ。
そんな思いを抱え、池明太は未知の教室へと足を踏み入れた。
「…ん?お、我がブサイク教室に新たな仲間が到着したみたいだぞ!」
教室に入ると、1人の男子生徒の歓迎する声が聞こえてくる。
「おお!!1つ席が空いてたから心配してたんだが、無事に来たみたいだな!おい歓迎の挨拶と行こうぜ、みんな!!」
教室中にいるクラスメイトに視線を向けながら合図を送る男子生徒。
その合図に続くようにクラスメイト全員も頷き、池明太に視線を送り…
「「「ようこそ!!!ブサイク教室へ!!!」」」
「………何だろう……。本来なら嬉しい筈なのに、全く嬉しくないんだけど……」
何度も練習したかのような一体感のある不名誉すぎる歓迎の言葉を送られ、再び頬に一筋の涙が流れる池明太であった。
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