顔面格差から始まる成り上がり

ゆずどりんこ

第1話なんでだ!!?


「何でだっ!!!!!!!??」


時刻は午前8時10分頃、桜舞い散る春空に耳をつんざく程の怒声が響き渡る。

何事か?と周りにいる人達は声のする方角へと視線を移すと、そこには男子制服を着た1人の学生と女子制服を着た1人の学生の約2名が学院受付の前に立っていた。


「ちょっ、ちょっと煩いですよ!!いきなり大声で叫ばないで下さい!!」


男子学生と対面する学院受付の女性事務員が、耳を両手で塞ぎながら男子学生を睨みつける。


「大声で叫ぶなだって!!?この状況で叫ぶなと言う方がおかしいだろ!!!」


女性事務員に渡された1枚のプリント用紙を右手でパシンパシン叩きながら騒ぎ出す。


「この状況と言われても、大声で叫ぶ理由はなんなんですか?」


何故俺が怒っているのかの意味を理解していない女性事務員は、困りながら男子学生に問いかける。


「理由!?理由ならこれだよ!!これ!!!」


左手に持っていたプリントを女性事務員の机に勢いよく叩きつける。


女性事務員はそのプリントに手を伸ばし見える位置まで手繰り寄せる。


そこには『クラス分けと、それに関する案内」と書かれていた。


女性事務員は、プリントに書かれている文字を左から右へと視線を走らせ、読み上げていく。



「えぇっと、池明太のクラスは……ぶふっ!!!」


手で口を押さえ笑いを堪える女性事務員。


「今…笑ったな…。笑っただろーーーっ!!!」


プリントを読み上げていく途中で笑いを堪えている女性事務員に池明太は掴みかかる勢いで詰め寄る。


が、隣にいた幼馴染の女学生、藍沢美春が池明太の首根っこを掴み、動きを封じる。


「はいはい、詰め寄らないの。事務員さん困ってるじゃない。」


「困る!?今、困ってるの俺なんだけど!!笑われたんだぞ!!」


首根っこを掴まれた状態では身動きが取れない池明太は手足をジタバタさせながら幼馴染である藍沢美春に抗議する。


「別にいいじゃない。笑われるぐらい。男でしょ?」


「それ、男って関係ないでしょ!!!男だろうが、女だろうが本人の目の前で笑われて腹が立たない奴がいるものか!!」


「別に私は怒らないけど?」


「それは目の前で笑われた事が1度もない奴が口にする台詞なんだよ!!実際に笑われたら絶対お前も怒鳴り散らす!!俺には分かる!!だって今、実際に笑われた側だからな!!」


興奮が未だ収まらない池明太は更に激しく身体全体を使い猛抗議する。


「ああもう、分かった、分かったから、そんなに暴れないでよ。ここにいるの私達だけじゃないんだから。他の人達の迷惑になってるの分かってる?それに注目浴びて恥ずかしいんだから…」


更に力を入れて池明太の首根っこを縛り上げ自由を奪う。


あまりの力に首元が絞まり、若干命の危険を感じた池明太は動きを止め、大人しくなる。


すると始業5分前を知らせるチャイムがスピーカーから学院全体に響き渡る。


「ほら、始業前のチャイムが鳴ったんだから早く教室に行くわよ。」


「ま、まて、美春!!俺の話はまだ終わってないんだ!!」


首根っこを掴んだまま藍沢美春は池明太を引きずりながら教室へと向かおうとするが、未だ抵抗しようとする池明太。


しかし、ここで時間を無駄に浪費しようものなら朝のHRに遅刻してしまう恐れがある。


それを回避する為に、無理やりにでも池明太を引きずる藍沢美春は心の中で溜息を吐く。


「くそっ!!何で俺が入るクラスがブサイククラスなんだぁぁぁぁーーっ!!!」


悲痛な声を上げながら池明太は美春に引きずられながらその場を後にするしかなかった。







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