第5話 (中編)

『ただいま』

『あ、おかえり』

『おかえりなさい』

午後7時ごろ。

パートから帰ってきたお母さんが多分もらったお弁当を何種類か出す。

『今日も貰ったの?』

『余っちゃったから。どれがいい?紫穂ちゃんも遠慮せずにね』

『はい。ありがとうございます』

見てみると三種類あってそれぞれメインディッシュがハンバーグ・カツ・スパゲッティ。

あれ?

三つだと足りない気がする。

『お母さん。拓弥さんの分は?』

『あ、お父さんは出張で泊まりだよ』

『そう。明日の午後には帰ってくるとは言ってたけどね』

『そっか』

『それで。どれがいい?』

『紫穂。先に決めていいよ』

『えーと、それじゃあスパゲッティを』

紫穂がスパゲッティを取っていく。

残るはカツかハンバーグ。

『お母さんどっちがいい?』

『言っても無駄だろうけどハンバーグね』

『奇遇だね。いつも通り決めない?』

『いいわね。そうしましょう』

私とお母さんが右手の拳を出す。

『『最初はグー!ジャンケンッポンッ!』』

私がグー。

お母さんがパー。

『ま、負けた…』

『やったぁ〜!』

お母さんは笑顔でハンバーグを取っていく。

私は残ったカツを手に取る。

『来海ちゃんカツ嫌いなの?』

『いや好きだけど!晩御飯っていうよりお昼に食べるイメージない?』

『そうかなぁ。人それぞれの食生活によるんじゃない?それは』

『ま、そうだよね』

三人が席についてそれぞれのお弁当を食べる前にお母さんの手が止まる。

『なんか、この席臭うわね…。なんか、何処かで嗅いだことある臭いだけど…』

ギクッ!

お母さんが座ろうとしている席は先程まで紫穂が使っていたところだ。

紫穂も気づいたのだろう。

顔が少し真っ青になりながら私に助けを求めている。

紫穂はまだお母さんに慣れてないから私が話すしかない。

というか、何か早く言い訳しなきゃっ!

『お、お母さんっ!そこさっき虫が止まってたから殺虫スプレーかけようとして…ええと…そう!間違えて速乾スプレーの匂いついるやつかけちゃったから…』

い、いけるか…!?

『あら?来海もたくましくなったわねぇ。スプレーで虫を駆除するなんて。それじゃあ、今度からは来海に頼むわ』

『えっ!?ま、まぁ…いい、けど』

ここで肯定しなきゃ嘘だとバレしまうかもしれない。

本当は虫嫌いなんだけど…。

でも、紫穂が嬉しそうにしてるから別にいいや。

『ところでお母さん』

『何?来海』

お弁当のハンバーグを食べながらお母さんがこちらを見る。

『紫穂の部屋がないんだけど、早く作ってあげたほうがいいんじゃない?』

『えっ!?』

反応したのは紫穂の方だった。

口に運ぼうとしていたスパゲッティが落ち容器に戻る。

『く、来海ちゃん。わたしと一緒に寝るんじゃなかったの?』

『いや、寝るけど。でも、色々不便じゃない?服とか、小物とか。紫穂のものが私のものと紛れちゃっても困るし…。別に紫穂と別がいいってことじゃないからねっ!これは信じて!』

『うぅ〜』

紫穂が沈む。

物理的に。

机の下にどんどん沈んでいく。

『でも家、空き部屋がないのよね。だからこういうのはどうかしら』

お母さんが提案してくる。

聞き逃すまいと紫穂も身を乗り出す。

『来海の勉強机を処分して長い机を買うのはどうかしら?来海には少し部屋の片付けをしてもらうことになるけど勉強はやりやすくなるし、ガゴとか引き出しはちゃんとついてるもの買うから小物が混ざったりすることは少ないわよ。ベッドはもう一段階大きいのを。クローゼットに入ってるガラクタを私の部屋に移動させるから十分な広さも確保できるわ』

『おおー!』

『なるほど。それじゃあ、一つ質問なんだけど。ベッドってもう一段階大きくする必要あるの?』

『うーん…二人が今のでいいって言うならそのままでもいいけど』

『私は同じものでいいです!』

答えたのは紫穂だった。

『来海ちゃんと一緒に寝られると安心するので』

『私もそれでいいよ』

晩御飯が終わり私と紫穂は自室へ向かう。

部屋の片付けをするためだ。

決して勉強が飽きたからではない。

時には休憩も大事だからねっ!

『大きいものはそのままにして、とりあえず小物から箱の中に詰めてっちゃう?』

私が指さした先には魚やイルカなどをモチーフにした置物が数多く並んでる棚だ。

『ええっ!勿体無いよ!せっかく可愛いんだから閉まったら可哀想だよ。来海ちゃんも気に入ってるみたいだし。私もなんか持ってこようかな』

『それじゃあ、これはそのままにしといて。紫穂のものも開けるスペースも作らなきゃ。紫穂の家の鍵持ってる?』

『うん。テスト終わったら取りに行こうかな』

『それがいいね』

ぬいぐるみの数を少し減らしていく。

ガラクタはお母さんの部屋へ。

机やクローゼットはまだ弄らないがだいぶ二人で過ごしやすい環境になったと思う。

『これくらいでいいと思うけど。あと一つあえていうならこの本棚だよね』

『うーん。背も少し高いから少し不便だし、小さめのを何個か新調したほうがいいかも』

『なるほど』

メモメモ…。

『このくらいで終わりかな。そろそろ勉強するかぁ』

『え?来海ちゃん余裕なんじゃないの?』

『私はね。紫穂の話』

『私は公式覚えたから余裕だよ。文系は得意だし』

『・・・・・』

紫穂って覚えれば速いんだよなぁ。

『それじゃあ、明日また勉強するとして…暇だね』

『そう?私はやりたいことあるんだけど』

『えっなになに?』

『女同士の保健体育』

『・・・今日二人ともイッたよね?』

『わかってる。だから勝負しよ来海』

『勝負?』

『そう。野球拳って知ってる?』

『定番なやつだね。脱いでいくやつでしょ。勉強の時似たようなのしたよね』

『これだけだとつまらないから負けた人はペナルティとして…』

紫穂が衣類が入っている箱の中から何やらリモコンとピンクの…ピンクの…!

『それって…!ま、まさか…』

『そ。ローター』

『そ、それをどうするの?』

『理解が早いね。これを負けた人がパンツの中に仕込むの。もちろんじゃんけんに勝ったら交代。先にイッたら負けだよ』

『わ、わかった。強さは?』

『最高値。私がやってみたところ来海が全力を出した時とは比にならないよ。私に強すぎるくらい』

『それ…私耐えられるの?』

正直怖い。

紫穂に激しくされるのは好きだけど、機械に気持ち良くされるのってなんか違うと思う。

それに、痛そうだし。

『とりあえずやってみようか』

紫穂の宣言で勝負は始まった。





ー次回作についてー

今回の話の続きは二つ作ります!

私側としても二人とも興奮してるところが見たいですので皆さんも読んでくれると嬉しいです!

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