第2話

目覚ましの音が聞こえたので起きる。

まだ完全には覚醒していない頭はボーとしている。

正直言ってまだ寝ていたい。

昨日結局、紫穂がすぐ目覚めてしまい寝るまで頭を撫でたりしたら自分が寝るのが遅くなってしまった。

元凶である紫穂は私の隣でまだぐっすりと眠っている。

時刻は朝の五時。

そろそろ起きないとお母さんたちが起きてしまう。

その前にお風呂を済ませなければ。

昨日えっちのせいでまともに体も洗えなかったから早くお風呂に入りたい。

だから私は紫穂を起こすことにする。

『紫穂起きて。お風呂入りに行こ』

『んん〜。まだ寝たいよー』

『あ、そう?それなら私先に行くけど?

『ああ〜ん。そんなこと言わないで。でも、あと3時間…ぐぅ』

『あっ!こらっ!寝るなっ!』

私は紫穂の体に巻きついている布団を剥ぎ取る。

紫穂の体には一気に冷気が襲いかかることだろう。

案の定。

さっきまで寝ていた紫穂は青ざめた顔をして起きた。

『来海ちゃんの意地悪!ひどいっ!』

『あっそ。それじゃあ、私は行くから』

『うそっ!ごめんなさい!来海ちゃん大好きだよっ!』

『わかればいいの』

紫穂の頭を撫でてあげる。

紫穂は気持ちよさそうに目を細める。

猫みたいで可愛い。

『それじゃあ、行こ』

『はーい』

着替えを持って二人で部屋を出る。

廊下には冷気が漂っておりもうすぐ冬になると知らされる。

いつもはお母さんが先に起きるから静かに思える。

階段を降りて浴場へ向かう。

『なるべく早く出ようね』

『それは無理かなぁ』

『へ?』

紫穂が一気に距離を詰めてくる。

しまっー。

『ちゅっ』

『んんっ!』

紫穂が口の中に舌を入れてくる。

自分の舌が弄ばれるのは自分からやるのとは違う。

自由に動かすことができない。

紫穂からディープキスされるのは稀だが、する時は必ず私だけをイカせる時だけだ。

『し、しほっ!だ、だめだって!』

『体洗うから別にいいじゃん。来海だけ気持ちよくさせてあげる』

キスだけで力を抜かしてしまった私の服を紫穂が脱がす。

『お風呂行くからね』

『し、しほ…これ以上はだめ…。お母さん達起きちゃう』

『起きないよ。まぁ、これも保証はできないけど』

『やめてよ。んんっ!』

下部への刺激。

紫穂の指がはいってきたのがわかる。

昨晩とは違った軌道を描く指の動かし方で私を犯す。

『声抑えてないと聞こえちゃうよ?ちゃんと抑えてね』

『んんんっ…ンッ!…イ、イッ…んんんんんんん!!!!!』

ぴちゃっと音を立てて中から出てきたモノが足をつたって床を濡らす。

足に力が入らなくなった私はその上に座り込んでしまう。

自分のに座っていると思うと気持ち悪い。

『来海。偉かったね。ちゃんと声抑えれて』

紫穂の目が私を馬鹿にするかのように見てくる。

本当はそう私が見えただけで実際はそんなことなかったのかもしれない。

でも私は紫穂の行動に我慢出来るほどお人好しじゃなかった。

涙目になった瞳で紫穂を少し睨む。

『はぁ…はぁ…や、やめてよ。バレたら出してたつもり…?』

『そっ!、その時は…』

紫穂は答えなかった。

否、答えられなかった。

自分の心から暗くて重い嫌な気持ちが湧き出るのがわかる。

『ちゃんと…考えてくれないと……私、困る。体お湯で流してもう出るね。お先』

シャワーで濡れた所を入念に洗い流し、私は浴場を後にする。

残った紫穂はただ佇むことしか出来なかった。



『行ってきます』

『わ、私も…』

『はーい。行ってらっしゃい』

『二人とも気をつけてな』

お母さんと拓弥さんに見送られて私と紫穂は学校に向かう。

『『・・・・・』』

学校まで徒歩10分ちょっと。

二人で無言のまま歩くのは少し心苦しいものがある。

私が悪いわけでは断じてない。

犯人は紫穂だ。

でも、私は無理にでも抵抗すれば遮れたものを遮らなかった。

それは、私が紫穂を求めていたに他ならない。

胸に溜まる黒い蟠りが晴れようとしていた。

・・・今回はお互い様か…。

『紫穂』

『・・・・』

紫穂は黙ったまま私を見つめる。

その目には少し後悔がありそうだった。

今にも泣き出しそうで怖い。

紫穂はいつもは元気に振る舞うけど少し暴走したり繊細なところもある子だ。

そんなこと、私が一番知ってるのに、情けない。

紫穂の髪に触れる。

『来海ちゃん?』

えっちの時は呼び捨てにするくせにいつもはちゃん付け。

身長も変わらないのに今は幼なげに見える。

『ごめんね。少し怒りすぎちゃったよね。これから気をつけてくれるなら…許してあげる』

…我ながら生意気なものだ。

まぁ、紫穂に響いてくれればそれで良い。

当の本人はもう目から後悔の色はなくなりいつものキラキラとした目になっている。

『うん!ありがとう来海ちゃん』

『別に。私も拒絶しなかったし。今回はお互い様だよ』

『えへへ…来海ちゃん、手。繋いでも良い?』

『まぁ、いいけど…』

周りには学校近くなだけあって生徒がちらほらいる。

でも、浮かないから別に気にしない。

周りの二人組の女の子達は手を繋いでる子が多い。

そう。

私たちの通う学校は女子校。

それも、ただの女子校とは違い全面的に同性同士の恋愛を祝福してくれる学校だ。

生徒の希望なら形だけでも学校側から婚約届けを出すことができるらしい。

当然、ここ独自の文化だ。

寮もあり二人部屋なのでそこで付き合う人も多いと聞く。

私たちがこの学校を選んだ理由もこの文化があるからだった。

紫穂と恋人のまま学校に通いたい。

受験は紫穂が無理をしながら頑張ってくれた。

『ねぇ。紫穂』

『なぁに?来海ちゃん』

『私って、紫穂にとっていい恋人に慣れてるかな?』

『そんなの、当たり前だよ。来海ちゃんはちゃんと私を愛したり叱ってくれるし。あと、すごく可愛いし。えっちな時もえろくて…』

『あー!わかったわかった!』

変なこと口走る前に止める。

『あと』

まだ、あるのかな…。

『私の唯一の家族だから』

その言葉に私は、ハッと何かを感じた。

紫穂の笑顔は輝いていて私には少し眩しい。

家族。

それは、私達が欲しかった結果を少し先取りして掴んだものでもある。

いつか、本当に…今度は、夫婦として家族となれるように。

『大好き。紫穂』

『えっ?来海ちゃん。外だよ』

『別に誰も気にしないって』

紫穂の唇にキスをする。

一瞬だけのキス。

そこには私の全ての思いが溜まっている。

紫穂に受け取って欲しい。

『これからもよろしく』

学校校門前。

多くの生徒が見守る中、私と紫穂の新しい人生がスタートした。

姉妹になって二日目。

今日も一日、頑張ろう。

そう気づかせてくれたのは紫穂だと思う。

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