不眠症の彼女が親の再婚で妹になる百合のお話

ユリィ・フォニー

第1話

『お母さん再婚しようと思うの』

全てはこの言葉から始まった。

私(河越来海)にはお父さんがいなかった。

物心つく前に交通事故で亡くなって私は顔すら覚えていない。

だが、この時はお母さんの再婚は良いことだと思った。

女で一つのにも関わらず私を高校2年生まで育ててくれたし、新しい愛を育みたい頃だろう。

それに、お母さんが再婚して幸せになるなら私も嬉しいし……。

『別に良いんじゃない?それでお母さんが幸せになってくれるなら私も嬉しいし』

『うっ、うっ。く、くるみい。ありがどぅ』

『ちょっ、泣かないでよ』

近くにあったティッシュで涙を拭いてあげる。

本当に涙もろいんだから…。

涙を拭ったお母さんが話を続ける。

『それで、一つ問題があって。そのお相手の方に連れ子がいるのよ。しかも来海と同じ歳の女の子』

『へー。そうなんだ。私は別に構わないけど…。その子は了承してくれてるの?』

『してると言っていたわ。なぜか、来海の名前を聞いたら飛ぶように喜んだって…。知り合いかもね。学校も同じって言ってたし』

『へーそうなんだ』

飛ぶように喜ぶ…か。

私と一緒にいて喜ぶ子は限られてくる。

友達は少ないし、高校入った子が多いから。

でも、私には彼女がいる。

彼女の名前は鈴沢紫穂。

私の大切な彼女。

中学の時から付き合ってる私と関わる人の中でかなり上位の人だ。

紫穂になんて言おうかな…。

学校が同じで学年が同じ子と一つの屋根で住むことになりましたとは到底言えない。

多分、家に凸りにくる。

まぁ、今度考えるとしよう。

この時の私は知らなかった。

私が誰と姉妹になるのかを…。



早くも当日の日が来た。

お母さんは鼻歌を歌いながら晩御飯を作っている。

対して私は朝から誰と姉妹になるのかとビクビクしていた。

仲のいい人ほど姉妹にはなりたくない!

紫穂に怒られたり嫉妬させたりは…ちょっとしたいけど…でも!

私には紫穂が一番大事だから!

ピンポーンと、インターホンが鳴った。

ビクッと体を縦に揺らしながら驚いている私にお母さんが笑った。

『あはは。そんな緊張しなくても大丈夫よ。来海なら誰とでもうまくやっていけるわ』

お母さん…その言葉は私を抉ることしかできません。

もう一度インターホンが鳴ると同時にお母さんがドアを開ける。

『いらっしゃい。待ってたわ拓弥さん』

『ごめんね春ちゃん(お母さんの名前)。娘が来海ちゃんにどうしても貸したい本があるって言うから。君が来海ちゃんかい?娘がお世話になってます。鈴原拓弥です』

『あ、はい。これからよろしくお願いします』

私は挨拶するが、頭の中は上の空だった。

鈴原…鈴原拓弥…鈴原…鈴原…鈴原…紫穂!?

そう。

鈴原は紫穂の苗字である。

って、ことは…!

予想は的中した。

拓弥さんの隣から付き合ってから一時も忘れたことのない大切な彼女、紫穂が顔を出した。

『し、紫穂……?』

『来海ちゃん!本当に来海ちゃんだっ!』

『わぁっ!紫穂…苦しいよ』

私を見ると同時に抱きしめてくる紫穂を止める。

そんなやりとりを見てお母さん達は不思議そうに聞いてくる。

『あら?二人ともお友達?来海友達少なかったから…。世間は狭いわなぇ』

『そうだね。でも、安心だよ。二人とも気の許せる仲ってことがこの目で見られて』

『それもそうね』

拓弥さんの言葉にお母さんが同意する。

『お母さん。ここじゃあ、悪いし早く家の中に…』

『そうね。晩御飯を作ってあるわ。みんなで食べましょ』

『わーい。来海ちゃんのお家!』

『春ちゃんのご飯美味しいから嬉しいよ』

二人がお母さんに続いてリビングへ向かう。

私もその後についていく。

『それじゃあ、ここに座ってて。準備は私と来海でやるから』

『え、そんな悪いよ。僕たちも手伝うよ』

『運ぶだけだから大丈夫。紫穂ちゃんもゆっくりしててね』

『あ、ありがとうございます』 

拓弥さんと紫穂を置いて私とお母さんは料理を盛り付けて運んでいく。

5分くらい経って運び終え四人で食卓を囲む。

二人で食べる食事よりも賑やかなものだった。

会話の内容は…何故か私のこと。

紫穂がまるで自分のことの様に語っている。

『先日のテストも来海ちゃんが一番だったんですよっ!これで10回は超えたと思います』

『凄いわねぇ!来海なんで見せてくれないのよ!』

『えーと、懇談会の時に聞くものだと思ってたから…』

本当は嘘だ。

私のテスト・・・厳密に言うと回答用紙全てに紫穂のメッセージがついているのだ。

だから見せれるはずがない。

内容は全て紫穂からの愛してるだとか、すごい!だとかだ。

にも関わらず目の前に座る彼女はさらっと言った。

隠す気あるのだろうか?

たまに心配になる。

紫穂とは長いこと上手くやれてるし私も愛してる。

でも、紫穂はオープンなのでつい言ったりしないか心配になる。

『来海ちゃん。考え事かい?』

『えっ?』

考え耽っていたのを心配して拓弥さんが私の顔を覗いてくる。

『あ、いえ。特に大事なことでもないので。えーと、なんの話でしたっけ?』

『寝る時のベッドの話なんだけど、来海ちゃんは紫穂と一緒に寝るのは賛成かい?』

『えっ?』

紫穂と…一緒に寝る?

もちろん賛成だけど紫穂もベッド持ってるはずじゃ…。

あ、そうか。

今日から一緒に住むからベッドは置いてきたのか。

『はい。私も紫穂と一緒に寝たいです』

『やったー!』

紫穂が両腕を高く上げて喜んでくれる。

『さぁ、二人ともお風呂入ってきなさい』

『はーい』

『は、はい!』

空になったお皿をシンクに置いて自室にパジャマを取りに行こうとする。

『あ、来海ちゃんパジャマの予備持ってる?お父さん忘れちゃって』

『もー。忘れたのは紫穂でしょ。わかった。来て』

2階にある私の部屋に誰かを招くのは紫穂が初めてだ。

今まで誰も入れたことのない部屋。

最初が紫穂とのことがあり私は密かにドキドキしている。

『来海ちゃんの部屋初めてだね。なんだかんだ付き合ってるのは隠してるし』

『そうだね。私もこうして紫穂を部屋に招けて嬉しい』

ドアを開けて部屋の明かりをつける。

白を主とするシンプルなデザイン壁に誰もが持っている勉強机、唯一個性があるとするなら貝や魚をモチーフとしたぬいぐるみや置物が多いくらい。

『か、可愛い!一見シンプルで落ち着いた感じに見えるけど、水族館みたい!』

『そこまで可愛くないよ。これから二人で可愛くしてこ』

『えっ!?』

『?』

紫穂が驚いている。

体をうずうずさせ何かいいだけな様子だ。

『来海ちゃん、私と一緒の部屋でいいの!?』

『えっ?うん。私は紫穂と一緒の部屋がいいけど…。あ、紫穂が嫌だったら…』

『そんなのありえないよ!』

紫穂と私の顔の距離がグッと近くなる。

キラキラとした瞳と艶のある肌にドキッとするが、目を逸らして耐える。

うぅ〜彼女の顔がいい!

『私は来海ちゃんの彼女なんだから一緒にいたくない時なんてないの!わかった?』

『う、うん。わかったから…ち、近いよ紫穂』

紫穂の肩を押して遠ざけ用とするも躱される。

それどころかより顔を近づけ私の唇にキスをした。

紫穂の香りがする。

髪から漂うシャンプーのいい匂い。

ぷるっと艶のある唇。

舌は入れない軽いキスでも私の心を奪うには十分だった。

『し、紫穂。だ、ダメだよ…』

『そうだね。でも、来海ちゃんも早くえっちしたいんじゃない?キスひとつでスイッチ入っちゃうんだから…ね?』

それ以上紫穂は何もしてこなかった。

多分えっちをするのは今じゃない。

きっと、今からどこかのタイミングでするはず。

期待を膨らませる自分に少しため息もつきたくなるが真実なのでグゥの音も出ない。

パジャマと下着をそれぞれ持ってお風呂へと向かう。

隣で紫穂が着替えるのを横目に私も脱ぎ始める。

紫穂は私よりも凹凸のある体をしている。

そのまで大きくもないが私よりかは大きい。

・・・いつも、私が揉まれてるのに…。

揉むと大きくなるのは個人差があること身をもって知る。

紫穂の裸を見るのは初めてではない。

学校で水泳の授業があるときや、えっちする時も何回か裸を見る機会はあったが、学校もえっちも凝視するほど余裕がなかった。

だからなのか、私の目には紫穂の肌がいつもよりキレイに見える。

『来海ちゃん。痩せたんじゃない?』

『きゃっ!』

いつの間にか背後にいたのか紫穂が指で私の腰をなぞり始める。

は、始まった……!

心臓がドキドキしている。

そう、恐怖が6で嬉しさが4。

紫穂の顔は野獣のアレだった。

狐の顔を被ってる狼ほどえっちな女はいない。

紫穂はまさにそれだ。

『べ、別に痩せてないからっ!紫穂の方がよっぽど…んんっ!』

紫穂がピンポイントで私の気持ちい所を攻めてくる。

あ、これヤバイかも…。

お風呂入るまでにイッちゃう。

『ふふっ。来海って可愛い声出すよね。その声で私、もっと来海をめちゃくちゃにしたくなる』

『や、やめれ…お、おふ…お風呂入ってからにっ!』

紫穂の指がの中に入り絶頂へ導く。

声を抑えることも出来ず、か弱い奇声をあげる。

紫穂が口に手を添えてくれるけどお母さん達に聞こえたかもしれない。

一つ目の波が私を包む。

私の中から我慢できなかったモノが溢れ出す。

床は濡れ、特有の匂いが漂う。

『そうだね。お風呂入ろっか。来海足元に気をつけて』

紫穂がふらつく私を支えて浴室へ行く。

私の後ろに紫穂がいる形で収まる。

布一枚も邪魔せず私の後ろに紫穂の胸が当たっている。

だが、それを堪能する暇もなく快楽へ溺れていく。

『始まるね』

紫穂が私の耳元で囁く。

『んぁっ!』

紫穂の指が中にはいる。

『し、しほっ…、こ、声が外にもれひゃうよ…あぁぁん!』

『大丈夫。ドアもちゃんと鍵かけたから誰か来ることもないよ。まぁ、保証はできないけどね』

『あっ………だめ……そ、そこは、ダメっ!あぁぁぁ…イ、イクっ!』

二度目の波が私を包む。

『今の来海すっごく可愛い。えっちで私に溺れてる時が一番可愛いよ来海。もう一回イこっか』

紫穂がもう一度入れようとする手を止める。

『ヤダ…これ、以上は…ダメ…次は、私のばんでしょ?』

息を少しずつ整えて体を半回転させる。

紫穂の顔は少し赤く染まり私を見る目は他の人が睨んでいると勘違いさそうだが、私にはただご主人様を待ち侘びているペットのように見える。

『ほ、本気じゃない…よね?』

紫穂の額から汗がで始める。

『本気だよ?私のことここまでめちゃくちゃにしたんだから紫穂も同じくらい愛してあげる』

紫穂にキスをしてあげる。

さっき部屋でやったものとは違うディープなもの。

舌を紫穂の唇に忍ばせる。

『んんっ!』

『はぁ…はぁ…し、紫穂ちゃんも濡れてるんじゃない?』

私は浅いとこの方がイキやすいけど紫穂は反対で奥まで刺激を与えた方が気持ちよさそうにする。

今のディープキスで紫穂も出来上がった頃だろう。

紫穂の瞳は涙で少し濡れている。

さっきまで私を攻めていたとは誰も思わない。

今度は私の番。

紫穂の奥深くに人差し指と中指を同時に入れてあげる。

ビクッと紫穂の体が揺れた。

『い、いきなりっ…に、にほんっ!く、来海ちゃんっ!……あぁぁぁん!』

お風呂に浸かっているけど紫穂が私の手に出したモノは感じ取れた。

『はぁ、はぁ…。く、来海ちゃんのえっち』

『それはお互い様でしょ』

力の抜けた紫穂を支える。

なんか、さっきと逆。

『体洗うの明日でいいからとりあえず出よう。のぼせちゃう』

『そだね。来海ちゃん意外と激しかったよ』

『それもお互い様ということで…』

紫穂と一緒にお風呂を出る。

パジャマ着替えて恐る恐る二人でリビングへ行く。

『き、気づいてないよね…?』

『た、多分…』

ドアを開けるとそこには何も知らなさそうなお母さんと拓弥さんがいた。

よかった。

多分バレてない。

『お風呂出たよ。二人で入ってきたら?』

『そうするわ。行きましょ拓弥さん』

『そ、そうですね。で、ですが、春さん一人で入ったらー』

『お父さん。キモいよ』

『うっ!し、紫穂そんなこと言わないで…』

拓弥さんの顔が赤い気がする…。

拓弥さん…もしかして初心?

手を引かれて無理矢理連れてかれた拓弥さんを見届けて私と紫穂は寝ることにする。

2階に行き、二人でベッドに入る。

一人で寝るのに慣れているので少し狭い。

だけど、これも少しずつ慣れていけばいいのか…。

いつもはしなかった紫穂のいい香りも気になるけど…。

『紫穂。電気消してもいい?』

『いいよ』

リモコンで電気を消すと隣にいる紫穂の顔も見えなくなる。

『おやすみ紫穂』

『あ、く、来海ちゃん。出来ればもう少し起きててもらっていい…かな?』

『いいよ。紫穂の不眠症解消のためにも』

『ふふっ。ありがと』

紫穂が私の頬に手を添えてくる。

『えっちはなしだよ』

『わかってる。少し軽くキスするだけ』

『ん』

ただ一瞬触れるだけのキス。

それだけでは物足りないので紫穂を抱き寄せる。

『来海ちゃんの匂い、落ち着く』

『いい匂いだといいけど…』

『甘くてリラックス出来るよ。私が一番好きな匂い』

『おやすみ紫穂』

『う、うん。おやすみ…く…るみ…すぅ、すぅ』

『意外と早いな』

紫穂は寝息を立てて寝てしまった。

私は最後に紫穂の額にキスをする。

『おやすみ。明日からまたよろしく』

最初は何が起こると思っていたが、最高の結果になった。

明日もこんないい日が続くといいな。

私の意識も深い闇の中に沈んでいった。

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