第3話 経営改革着手


 *  経営改革着手


「皆さん、取締役に就任された、自見さんです」

「自見です。この度身に余る職務を賜り、身が竦む思いで御座います。どうか宜しくお願い申し上げます」


 遠藤専務勇退で、全ての憂いが払われた。社長は、先ず組織改編を実施した。専務は置かず、大河原取締役を常務取締役、営業副本部長に、木島取締役は管理本部長、財前経理部長を取締役に、新たに社外から内田取締役を迎え、異業種との折衝担当に。

 そして自見取締役には、大同警備20年計画案の実現責任者として未来を委ねる大胆な改編となった。

 総勢6名、事業部は廃止、本社と各支社のホットラインを強化。各部門にそれぞれのスペシャリストを配置、例えばK市総合ターミナル物流センター警備隊でのパワハラ事案に対しては、パワハラ専門の弁護士、メンタル面担当専門員を派遣し、速やかに事態収束を図る。


 図師は、自見取締役配下として、教育部次長に抜擢された。



 *   業務内容及び待遇面の見直し


 自見は、先ず取締役会で正社員を限定する案を提出した。その骨子は、少子、高齢化の今日、警備業も人手不足が深刻になることは事実。優秀な人材を得るためには、高待遇の条件は必須。その原資は、パートの人員増で人件費を抑える。

 常駐警備の業務内容を考察すると、正社員もパート社員も等しく同じ業務をこなしている。一見それは、公平、平等の勤務体系だが、しかし、正社員とパート社員では給与面で大きな差がある。その差があるのに、同等の業務内容、またそれに伴う責任に対し、公平性を担保しているとは言い難い。

 パート社員は高齢者でも良い、そしてポジションを限定する。すれば、短期間で仕事内容を習得出来、研修費用が軽減される。

 空港保安業務においても、同様な不満が起きていた。パートというだけで、仕事内容は正社員と何ら変わらないのに、給与面で格差があれば、仕事に対する意欲が損なわれる。また手荷物検査だけ実施しているように見えるが、その荷物を時に綿密に検査するする際には、相当な体力が必要なことも。

 過酷な労働環境は、待遇面で格差がある正社員とパート社員に軋轢が生じる。結果、退職する人が多くなる。頻繁に人の出入りが多くなれば、現場は混乱する。それを防止するには、パート社員は限定した業務だけ担当し、以って雇用安定を図る。



 *   機械警備


 機械警備は、事件、事案発生時に機械警備隊員が現場に急行する。大同警備は、警備の施設を受注した時は、必ず機械警備隊員が警備開始時前に警備先を確認した。それは、基地局から、事件、事案で現場直行の指示があれば、現在地からその警備先まで最短距離、最短時間で到着することにより、事件、事案の被害拡大を最小限に収めることを目的としたからだ。そして、それは夜間スーパー店長連続殺人事件犯人逮捕で、大いに成果があがり、一躍大同警備は名を上げた。

 自見取締役もかっては機動隊員だった。常日頃、警備先の図面を見て、何処が侵入されやすいか、また基地局から警備信号を受信したら、その信号は建物の何処を示しているか、何処に機械警備車両を停車させるか。

 自見が機械警備隊員の時は、脆弱な警備システム時代で,その時は、プロ的な機械警備隊員が必要だったが、今日のネット社会に、もうそれを必要とすべきではない。

 防犯、防災は、公共機関の、警察、消防とより強力な協力体制を組むことで保持される。大同警備会社は、機械警備の特徴、特性を活かし、新商品の開発を急がなければならない。

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