第54話 ロボットと大団円 破
ケイスケさんの再就職があっさり決まったのは、まったくひょんなことからです。ケイスケさんの元に起業した異世界転移者が相談にやってきたのですが、彼は人事部を任せられる人が欲しいと言っていました。
「ここに、元異世界人材管理局の局長がいるが」
ということであっさり再就職が決まったのです。
歓談とお食事のさなか、
「遅クナッテ申シ訳ナイ」
とやってきたのはスパイダーです。
「ボッチャマ、店ノ前デグズグズスルノハ迷惑ダ」
と戸口に向かって声をかけています。どうやらエヴィルスレイヤー少年も来ているようです。
「入ってこいよ、アル」
チャーリーがテーブルを離れて声をかけました。
「スパイダーの移動が決まったんだろ? いつまでもオトモダチがいないボッチだと心配させちゃうぜ? 」
おそらくエヴィルスレイヤー家本体に移動が決まったスパイダーが、学校で孤立するようになったエヴィルスレイヤー少年ことアルのことを気にかけ、エディーにはたらきかけたのでしょう。エディーは、アルとチャーリーは浅からぬ因縁がありますから、チャーリーにアルを呼んでもいいか尋ねたに違いありません。
「何? 友達きた? 」
チャーリーが席を立ったのを見て、ケイスケさんもこちらを気にしています。
「うん。まあ友達っていうか、いじめっ子? 」
チャーリーは軽い気持ちで口にしたのでしょうが、つい最近いじめ事件のことを知ったケイスケさんは
「なるほど」
と指関節を鳴らします。
止める間もなくアルの胸ぐらを掴み上げていました。スパイダーは面白いとでも言いたげに見守っています。全くもう。
ケイスケさんからアルを剥がし取って床に下ろしました。想定内だったのか、ケイスケさんはさして驚きもせず、アルのことだけを見ています。
「ケイスケさん、暴力事件二回はシャレになりませんよ。今度は罰金じゃすまないかも」
という私の忠告も、
「ハイハイ」
と聞いているんだかいないんだか。真っ直ぐにアルの方に向かうと、
「目を逸らさない度胸は気に入った。さっさと席につけ」
と言い捨てて自分の席へと戻っていきました。アルはスパイダーと一緒に子ども達のテーブルへと向かいました。
「D2はさ、けっこう人のこと助けに入るよね」
ボソッとチャーリーが言いました。
「そういうプログラムですから」
「D2ってけっこうしっかりロボットだよね」
「どういう意味ですか? 」
「ありがとうってこと」
チャーリーも自分の席に戻っていきました。
これでお客さまは揃ったので、私は給仕をすることにしました。本当は子どもテーブルの方の様子を伺いたかったのですが、そちらにはスパイダーがいるので、大人テーブルの方の給仕をします。
不意にケイスケさんの元を人影が二つ訪れました。ハーフエルフのジェイとビリーです。なんだか神妙な面持ちです。
「お隣よろしいかな? 」
とジェイ。それまでケイスケさんの隣に座っていたキムと元部下の一人が席をあけました。
「まずは再就職おめでとう」
とビリー。今日は軽口を叩かず、真面目な話ぶりです。
「どうも」
ケイスケさんの表情はいつになくカチコチです。
「二十二年前のことを謝りにきたのじゃ」
とジェイ。そういえばエディーの誕生にあたり、誕生そのものに反対していたとかなんとか言っていましたね。
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