第37話 ロボットとハーフエルフ会議 急
「いやあ、引きこもり拗らせた挙句ロボットにガチ恋とかヤバくない? とは思ったんですけど〜。相談する友人がいなくて進退極まって弟に相談するとか、なんか……もう実態があるだけマシかなって。いきなり指輪渡したのはドン引きなんだけどさ」
クッキーをバリバリとかじりながらチャーリーが話しています。エディーは私に指輪を渡す前にチャーリーに相談していたようです。
「そうだな。ベイビーは昔から一人で感情煮詰めて抱えこむからな。ロボットぐらいこっちのこと気にしない存在がそばにいた方がいいのかもしれないな。無気力引きこもりよりはロボットガチ恋ヤバ男の方がいいだろ」
「わしはビリーの言い方はひどいと思うぞ」
「でも事実だぜ?」
「まあその通りじゃが」
「納得すんな」
ボロクソ言われてエディーは膨れっ面ですが、ボロクソ言われるぐらいには、周りに愛されているということです。私は少しほっとしました。
「しかし、ロボ子ちゃんは大丈夫なのか? 返答なしってことは別に受け入れたわけでもないんだろ? バラすよう消しかけちまって悪かったか?」
「あ」
エディーの顔がみるみる青くなっていきます。
「別に気にしませんよ」
だからエディー、そんな顔しないで。
「あ、そう……いやそれはそれでベイビーはいいのか?」
「いいんです!」
エディーがそう言うならこれでいいんでしょう。
「ま、まあ、こういうのは本人がどう思うかだからな……」
今までペラペラと喋ったビリーが喋りにくそうになったことで、沈黙が流れました。
「……それでは本題に入りましょう」
エディーが言いました。そういえばハーフエルフ会議でしたね、親戚の集まりではなく。
「ああ、あれはもう答えが出ておろう。わしらは『ハーフエルフ』の呼称を気にしたことなどない。『ハーフエルフアンドハーフヒューマン』にでもすればいいのか? バカバカしい。貴族院だか衆議院だか知らんが改めて決をとらせることではあるまい」
「いっそ『ハーフアンドハーフ』にするか?」
「ピザは好きではない」
ビリーとジェイの言葉から察するに、貴族院だか衆議院だかがハーフエルフの呼称はハーフエルフでいいのかどうか決を採るようハーフエルフ会議に頼んだようです。確かに『
「僕はそう気に入っている呼称でもないのですが」
エディーも私と似たようなことを考えたようです。
「僕らのアイデンティティは、なんというか、単純に半分エルフの血が流れていることではないというか……。ラバを半ウマと言っているような違和感はあります。ラバは馬の半分だから重宝されているわけじゃなくて、足腰が強くて悪路も平気で学習能力も高い性質だからわざわざ作出されているわけでしょう?」
ラバは雄ロバと雌ウマを掛け合わせて作られる家畜です。ジェイとビリーは顔を見合わせました。彼らにはなかった視点のようです。ジェイが感心した、と言う表情で言いました。
「なるほどのう。じゃがラバの理論だと、わしらとエドワードどのは別種になるぞ」
「あ……」
雌ロバと雄ウマを掛け合わせた動物はケッティと呼ばれます。ラバと違って扱いづらいので、あまり作出されていません。エディーは人間の男性とエルフの女性の間に生まれた子どもですが、ジェイとビリーは人間の女性とエルフの男性の間の子どもなのでしょう。
「も、申し訳ありません、無神経なことを」
「よいよい。わしはエドワードどのが自分の意見を述べたことに感動しておる」
「そうだぜベイビー成長したな」
「アイデンティティは半分エルフの血が流れていることではない、か。そんなことが言えるようになるとは、わしら人もどきも立派になったものじゃ。そうじゃな、これからの時代はそうでなくてはな。……じゃがいい呼称は浮かばんのう」
「そうですねえ」
エディーも新しい呼称は思いつかないようでした。
「呼び名はそのままでいいんじゃないか? 不適当ではあるかもしれないがオレ様やジェイの若い頃みたいに人もどきとか亜人とか劣化エルフとかよりいいだろ」
「そうですね。呼称にケチつけたのは僕だけど、結局それがいいのかな」
私は思いついたことがあり、口を挟みました。
「それでは貴族院だか衆議院だかへの返答に一言付け加えてはいかがでしょう。我らの呼称はハーフエルフのままで良い。ただし我らは半分がエルフであるというだけでなく、『ハーフエルフ』独自の誇りを持っていることに留意されたし、と」
「お、ロボ子ちゃん冴えてる」
「すごいじゃないか」
「わしもそれでいいと思うぞ」
皆様賛成のようです。チャーリーも含めて楽しくお喋りをして、ハーフエルフ会議はお開きになったのでした。
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